テスラの圧倒的な利益率
今年1月、テスラは世界中で自動車の価格を最大で20%引き下げるという驚くべき発表を行いました。
自動車の世界では値下げはそれほど目新しいことではありませんが、テスラにとっては直近は相当程度値上げを繰り返していました。これまで強い需要に製造が追いつかない状況であったものが一変し、2022年7月に47万6000台あった受注残が、2022年12月には7万4000台まで縮小しました。
これは、テスラの生産台数が2022年に2021年比41%増(93万422台→131万3851台)と堅調に伸びていることに起因していると考えられます。
テスラは、無限の需要があると言われた時代から一転、逆に価格引き下げという攻勢に出ており、競合他社にプレッシャーを与える一方で、既存のテスラオーナーを怒らせている状況とも言えます。
過熱する価格設定
テスラの値下げは当然のことながら市場シェアを守るための試みですが、一部のメディアが主張するような絶望的な戦略ではありません。
ロイター通信がまとめた最近のデータによると、テスラの利益率は、粗利益と純利益の両方で、ライバル企業よりかなり高いことが分かっています。下の表はメーカー別の1台あたり粗利と純利益を示しています。
値下げには欠点もありますが、上記のデータからテスラにとって利益が非常に多いので、値下げしても大きな問題はないと主張することができるのです。特に中国のような重要な市場においては、です。
テスラは、弱小で薄利多売のプレイヤーをいじめ抜くために、最も効果的な選択肢を取ったのです。 ビル・ルッソ、オートモビリティー
中国のEV新興企業であるXpengとNioの場合、純利益はマイナスです。つまり、テスラの値下げに競合できるとは考えにくく、両社とも1月の販売台数は前年同月比で大幅に減少している状況です。
テスラに関しては、中国のメディアは、値下げ発表から3日間で3万台の注文を受けたと報道されましたが、ただしこれはテスラ社内の誰からも正式に認められていないとのことです。
値下げの状況
フォードは先日、電気自動車SUV マスタング・マッハE の値下げを独自に発表し、話題となりました。このモデルは、テスラのベストセラーモデル モデルYの直接のライバルとなる車種です。
シボレーとヒョンデもここ数カ月、以下の表にあるようにEVの価格を一部調整しています。
この表から抜けているのがフォルクスワーゲンで、同社は特に欧州市場でテスラに肉薄しています。
明確な価格戦略を持ち、信頼性を重視しています。自社製品とブランドの強さを信頼しているのです。 オリバー・ブルーメ VWグループCEO
今回の決定は、特にテスラの値下げに加わる自動車メーカーが増えれば、フォルクスワーゲンが目指すEVの覇権を阻むことになりかねません。今のところ、テスラはまだ米国市場を強力に支配しています。
テスラが車の価格を引き下げると発表したとき、直近のテスラ購入者は激怒しました。中国では、テスラの店舗や配送センターで抗議デモが行われたほどです。
最近の購入者は、より安い価格を逃しただけでなく、値下げした分だけ事実上、車の価値が一気に下がったのと同じ状況なのです。テスラは資産として評価されるというマスク氏の2019年の主張からすると、これは非常につらい展開なのです。
最も感慨深いのは、今日テスラを買うと減価する資産ではなく、評価する資産を買っているのだという事です。 イーロン・マスクCEO
この発言は、テスラの完全自動運転(FSD)機能について言及したもので、イーロンは、オーナーが自分のクルマをロボタクシーに変えられると主張していました。
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