廉価版テスラ「モデル2」を作るのにはあまり興味が有りません:イーロン・マスク氏

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ウォルター・アイザックソン氏によるイーロン・マスクの伝記には、テスラのエンジニア集団がイーロン・マスク氏に何年も働きかけ、ロボタクシーへの執着をやめ、より安価な大衆車を作る事業に取りかかった経緯が詳細に書かれています。その車は通常「モデル2」と呼ばれていますが、テスラがこの名前を使っているわけではありません。この議論は2年以上続きましたが、アイザックソン氏によると、最終的にテスラのエンジニア達が議論に勝利し、テスラの市場をより多くの購入者に拡大する低価格のテスラ車作りに取り掛かることが決定された、とのことです。

ウォルター・アイザックソンによるイーロン・マスクの伝記

昨年秋、ポール・フォッセ氏はモデル2がテキサス・オースティンのギガファクトリー・テキサスで製造されると報告しました。今年の初め、私が最も高く評価しているこのライターは、モデル2のような低価格EVのアイデアは、行ったり来たりしているようで、どんどん遠ざかっているようだと述べましたが、その後2月にロイター通信は、テスラが2025年半ばまでにモデル2を製造するための部品を納入する準備を整え、生産台数が週に1万台に達する見込みであることをサプライヤーに通知し始めたと報じました。

モデル2は構造のほとんどに超大型アルミ鋳造「ギガプレス」を使用するとの報道もありました。車のシャーシ全体が1つの高圧鋳造で作られるのではないかという意見さえありました。また、ドイツ、中国、メキシコ、インドの新工場で製造されるとも言われていました。この話は、アップルが20億ドル以上を投資して先月ついに暗礁に乗り上げた10年越しのプロジェクト・タイタン以上に紆余曲折がありました。

テスラ モデル2は今年2月にキャンセル

しかし2024年4月5日のロイター通信の報道によると、テスラはモデル2をキャンセルし、ロボタクシー製造の取り組みを再開するとのことです。また振り出しに戻ったわけです。エイプリルフールの記事として書くべきでしたが、誰も信じなかったでしょう。しかし、ロイター通信が取材した3人の関係者と内部メモによると、これは真実であるとのことです。

この決定は、イーロン・マスク氏が「秘密」のマスタープランで何度も明言してきた、大衆向けの手頃な電気自動車を作るという長年の目標の放棄を意味します。2006年の最初の「マスタープラン」では、まず高級モデルを製造し、その利益で「低価格のファミリーカー」を作るというものでした。

このニュースが先日発表された後、マスク氏は自身のソーシャルメディアに「ロイター通信は(また)嘘をついている」と投稿しましたが、具体的にどの部分の何が嘘かは特定しませんでした。

2人の情報筋によると、テスラがモデル2を廃止するという決定をしたのは、大勢の従業員が参加した会議で知ったとのことで、そのうちの1人は、その集まりは今年の2月下旬に行われたと述べています。

その人物によると「イーロンの指示は、ロボタクシーに全力投球すること」だったとのことです。3人目の情報筋はモデル2のキャンセルを認め、新たな計画ではロボタクシーを生産する予定だが、モデル2で予測されていた台数よりはるかに少ないと述べています。

ロイター通信が確認した、この決定に関する複数の社内メッセージの中には、3月1日に無名の手頃な価格の車のプログラム・マネージャーが、エンジニアリング・スタッフとプロジェクトの終了について話し合い、サプライヤーに「プログラム中止について」伝えるのを控えるよう助言したものも含まれています。テスラの計画に詳しい4人目の人物は、マスク氏が未来のモビリティとして構想しているロボタクシーに軸足を戻すという決定について楽観的な見方を示しました。この関係者は、テスラの製品計画は経済状況によって再び変更される可能性があると警告もしています。

手頃な価格の車を作るのは難しい

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ロイター通信によると、エントリーレベルの自動車から利益を生み出すことは、どの自動車メーカーにとっても課題ですが、テスラがこの種のクルマを追求するのを遅らせたことで、その価格帯ではるかに多くの競争相手、つまり、すでに市場に出回っている車、間もなく現れる車、少なくともモデル2が登場する頃には現れる車に直面することになり、より厳しくなったとのことです。テスラが非常に実験的なサイバートラックの開発に何年も費やしている間に、中国の自動車メーカーは手頃な価格のEVで先を急ぎ、市場シェアを獲得し、スケールメリットを得て、欧米の自動車メーカーが苦戦しているお買い得価格を消費者に提供しています。

手頃な価格のテスラ車の計画は、マスク氏の販売台数増加という壮大な野望を実現するための鍵と見られています。マスク氏は2020年に、テスラは2030年までに年間2,000万台を販売することを目指すと発言しています。これは、世界の自動車販売台数トップメーカーが1年間に販売する台数の約2倍に相当します。当然ながら、25,000ドルの車はそのような目標を達成するために不可欠と見られています。ロイター通信が閲覧したテスラのIR文書によると、同社の計画では、2028年までに販売台数が昨年の180万台から420万台に増加する予定とのことだったようです。

ロイター通信が確認した2人の情報源と社内のメッセージによると、待望のモデル2はサプライヤーと議論する際、社内ではNV91、社外ではH422と呼ばれていたとのことです。無名のテスラプログラムマネージャーからスタッフへのメッセージには、プロジェクトの終了について話し合う際にこれらのコードネームが使われていました。3月1日に送信されたメッセージの1つには、「サプライヤーはH422/NV91に関連するすべての活動を停止する必要がある」と書かれていました。情報筋によれば、プロジェクト終了の決定の背後にあるすべての理由を知っているわけではないとのことです。

3月1日に送られた別のメッセージの中で、このマネージャーは技術スタッフの努力に感謝し、何がわかったかを文書化するよう促しました。

「私たちが取り組まなければならなかったアグレッシブな制約の中で、限界に挑戦し、可能な限り最高の設計を実行するために、皆さんの努力と献身に感謝したいと思います。私たちの苦労を無駄にしたくないので、物事を結びつけ、きちんと文書化することが重要です。」

またこのメッセージには、廉価版テスラ車プロジェクトに関するミーティングがキャンセルされたことも書かれていました。2人の情報筋によると、何人かのエンジニアはその後配置転換されたとのことです。

テスラの次の課題は?

ロボタクシーに関するテスラのタイムラインとビジネスモデルは依然として不明です。マスク氏は、運転手のいないロボタクシーが最終的には人間が運転する車よりも一般的な交通手段になる可能性があるモビリティの未来を公の場で予測しています。

彼は以前、世界で最も時価総額の大きい自動車メーカーであるテスラは、完全自動運転を実現できなければ「基本的に価値はゼロになる」と述べています。

テスラは、マスク氏が自動運転車がすぐそこまで来ていると何年も予測していたにもかかわらず、自動運転車を製造できることをまだ証明していません。逆にテスラはオートパイロットと完全自動運転システムによる事故に関する訴訟や調査に直面している状況です。

マスク氏がロイター通信に不満を持つのには理由があります。昨年、ロイターは、テスラが車両のダッシュボード内の航続距離計に細工を施し、過度に楽観的な予測を出していたと報道しましたし、また2023年12月には、テスラが何年も前から欠陥があるとわかっていたサスペンションやステアリング部品の慢性的な不具合を「ドライバーの乱用」のせいにしたとも報道しています。

わずか数日前、テスラはBYDが13%の納車台数増加を報告した直後に、前年比8%の納車台数減少を報告しました。この新展開を、テスラはその自慢の技術力にもかかわらず、単に中国の競合他社に太刀打ちできないことの表れだと見る向きもあるかもしれません。皮肉なことに、テスラはそれらの企業に自動車製造の方法を示した企業のひとつなのです。

テスラが手頃な価格の電気自動車分野で出遅れたのは、マスク氏の極めて重要な決断のせいでもあります。2020年、テスラは大ヒットしたクロスオーバー、モデルYをリリースした後、手頃な価格の自動車ではなく、非常に実験的なサイバートラックに注力しました。同社はまた、製造上の問題、特にサイバートラックの先駆的なバッテリー技術や車体にステンレスを使用することの難しさを解決するのに苦労してきました。

つまりマスク氏の言うように「サイバートラックで墓穴を掘った」のです。

イーロン・マスク氏はいつもマスタープランがあると言い、私たちはそれを信じていました。しかし今、彼はまったく信用できる計画を持っていないようです。テスラが悲惨な財政難に陥り、アップルのティム・クックが電話の取り次ぎを拒否した時期もありました。アップルのEV計画、プロジェクト・タイタンが断念され、テスラの株価が急落している今、テスラが期待されることは実現も見通せない実験的なロボタクシーなのか、廉価版テスラなのかは明白です。

この記事はこの投稿を引用・翻訳・編集して作成しています。

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