世界ではカローラより売れてるのに…テスラが日本で売れない4つの理由

TESLA Blog
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あまり日本では報道されていませんが、2023年年間で最も売れた自動車(EVではなく)は、テスラの電動SUVモデルYだと言われています。テスラは自社ではモデル別の販売納車台数を公表していませんおで、正確な台数では無いでしょうが、電動セダンのモデル3とモデルYの合計台数は公表しています。

高級電動SUV

自動車関連のデータ分析会社JATOの公表したデータによると、テスラモデルYの2023年の販売台数は123万台で、前年比64%の大幅増となりました。そして2位がトヨタのSUVであるRAV4で107万台、3位がカローラの101万台となっています。

https://www.jato.com/tesla-model-y-to-be-crowned-worlds-best-selling-vehicle-of-2023/

日本にいると、にわかには信じがたいこの事実は、2つの面で驚くべき状況と言えます。一つは、モデルYはそれほど安価な自動車ではないということ、そしてそれが内燃機関車ではなくBEV(バッテリー電気自動車)であるということです。

ちなみに、日本での価格で比較するとモデルYはエントリーグレードで563.7万円〜、RAV4は293.8万円〜、そしてカローラに至っては218.4万円〜とモデルYの半分以下の価格です。

2023年日本で何台売れたのか

テスラは国別や地域別、モデル別の販売台数を公表していません。一方で日本国内に海外から輸入される自動車については、業界団体日本自動車輸入組合(JAIA:Japan Automobile Importers Association)が月次速報としてまとめて統計情報を公表しています。今回のテスラ車の推計台数はJAIAの公表するメーカー別の台数の内、「others」(その他)の台数の「小型車」を除いた台数を概ねテスラ車と推計しているものなので、正確な台数ではないですが、大きくハズレてもいないと推定されます。

下のグラフが、日本国内で月次にテスラが売れたと推計される台数の2020年以降の推移です。

2021年1月頃から、モデル3が米国フリーモント工場からではなく中国ギガファクトリー上海からの輸入になったこと、そして2022年9月頃から「世界で最も売れているクルマ」のモデルYが日本国内でも納車開始されていること、そして2023年第4四半期はモデル3のリフレッシュ版への切り替えがあったことなどがイベントしてありました。

少しわかりにくいので、2020年以降の四半期ごとにみてみると下のグラフのように、2023年は年間でわずか5491台しか売れなかったということです。日本は中国、米国に次ぐ第3位の自動車市場だと言われています。この台数は中国で売れているテスラのおよそ20分の1程度です。テスラは2023年の一年間で全世界で約181万台を納車していますので、その日本における販売シェアはわずか0.3%という信じがたい状況なのです。

下のグラフが日本国内と世界でのテスラの納車台数の2020年から2023年までの推移です。2023年だけ見ても世界の納車台数は昨年比138%であったのに対して、日本ではなんと前年割れの94%という惨憺たる状況です。

テスラの日本での納車台数推移
テスラの世界での納車台数推移

先月開催された2023年度の決算説明会でもこの状況に苛立ったかのようにイーロン・マスクCEOから、本来であれば日本市場ではメルセデスやBMWくらいの販売台数があってもおかしくない、という言及がありました。

今回は、なぜこれほど日本でテスラ車が売れないのかについて少し考察してみたいと思います。

4つの理由

認知・宣伝不足

テスラに限らずBEVには様々なメリットがあります。速くて静かで振動も匂いも少ない、バッテリーがシャシーの底面に敷設されているので走行が安定している上に収納は多い、加えてオンサイトで温室効果ガスが出ない、などなどです。単なる移動手段として見た時でも、特に近距離であればBEVが内燃機関車を圧倒する性能です。

ただ、これはあまり世間に知られてません。日産リーフのバッテリー劣化が激しいといった真偽不明のイメージはかなり広がっているような気がする一方で、航続距離や充電に関する真偽不明の情報が溢れています。

テスラも昨年ようやく重い腰を上げて広告宣伝を開始しています。もちろん日本国内でも、リスティングやX広告などちらほら実施されています。ただ、その効果はまだ全くと言っていいほど出てないのはその販売実績を見ればおわかりのとおりです。

充電インフラ

電気自動車の購入に最も懸念されるのが充電環境と航続距離です。この充電環境において日本の環境が相当遅れいているのは事実です。GoGoEVのサイトによると現在の全国EV充電スポット数は21,536拠点もあるので、十分な数のように思えますが、実際にはこの大半は非常に低速な普通充電であり、急速充電もその出力は50kWが一般的です。

テスラはEVへの参入からまもなく、自社で急送充電網スーパーチャージャーを整備してきました。現在、最高出力は250kW、テスラはスーパーチャージャーを世界でこれまで50,000基整備してきました。

このうち、日本では約100ヶ所のスーパーチャージャーに800基程度が整備されている状況で、お膝元の米国や中国、欧州での設置台数と比べると非常に少ない状況です。ただ、テスラの場合スーパーチャージャーステーションには必ず4基以上のスーパーチャージャーを設置し、首都圏、中部、関西の幹線道路沿いには概ね20kmに1ヶ所程度が整備されていますので、市街地を走っている分にはそれほど不都合は無いのですが、「不安が解消されるレベル」でないのは事実です。

一方北米では、日本のトヨタ、日産、ホンダも含むほぼすべての自動車メーカーが、テスラの充電規格NACSとスーパーチャージャー・ネットワークへの参加を決めている状況なので、EVにまつわるこの充電問題も一挙に解決する状況となっています。

価格

昨年世界も最も売れたクルマのテスラモデルYのミドルグレード、AWDロングレンジは日本で現在6,526,000円で販売されいまます。エントリーグレードのRWDでも5,637,000円です。

つまり、「高い」のです。あるいは「高級車」なのです。誤解を恐れずに言うと、経済的負担に耐えられるユーザーが少ないのです。同じものが米国では44,390ドル(7500ドルの補助金適用前)で販売されています。もし仮に1ドルが100円だとしたら、444万円で買えることになります…。

マルチパスウェイ

2023年世界で一番クルマを売った自動車メーカーグループはトヨタグループです。年間一千万台以上の自動車を売ったのですが、そのうち純粋な電気自動車、いわゆるBEVの割合は非常に少ないものです。これは、かねてから自動車の販売戦略として「マルチパスウェイ」戦略が取られているから、と言われています。

このマルチパスウェイとは、平たく言えば一気に無理してEVシフトするのでは無く(トヨタが得意でかなり儲かる)ハイブリッドから徐々に電動化を進めていくという戦略です。

理由は色々あるのですが、最も大きなファクターは、サプライチェーンの保護だと思われます。内燃機関車とバッテリー電気自動車では、その作り方も部品も大きく異なります。内燃機関車に特有のエンジンやトランスミッションを作っているサプライヤーは電気自動車では出番が無いのです。ただ、トヨタはそうした部品会社のおかげでたくさんの自動車を売ることができ、そしてものすごく儲かっているのです。

少なくとも日本国内には競争相手は居らず、既定路線で大儲けできるので、トヨタは明らかにEVシフトに消極的なのです。日本最大の会社が消極的なのですから、その結果は推して知るべしという状況なのです。

一方で、気候変動を抑えるためには、自動車に限らずまず電動化、そして電力の再生可能エネルギー化が必要です。この国際的な流れは(トランプが米国大統領に再びなったとしても)変わらないでしょう。

自動車の世界でも外側が見えずスマホと同じくガラパゴス化が繰り返されようとしているのです。

テスラ関連の最新記事を毎日随時アップしていますので、過去のニュースはこちらを参照ください。

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※免責事項:この記事は主にテクノロジーの動向を紹介するものであり、投資勧誘や法律の助言などではありません。また、記事の正確性を保証するものでもありません。掲載情報によって起きたいかなる直接的及び間接的損害に対しても、筆者・編集者・運営者は一切責任を負いません。また、運営者はテスラ株式のホルダーです。

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