テスラの場合、既存自動車メーカーの自動車購入とは違った面が多いので、今回は「コストに関すること」、「すべてオンライン」、「充電・メンテナンス」の3つの観点から、テスラ購入時に注意する点を9つにまとめてみました。テスラ購入を検討されている皆様の一助になればと思います。
コストに関すること
テスラは昨年6月までは、日本においては事実上セダンのエントリータイプであるモデル3のみを販売していました。そもそも、テスラには現在(2023年4月時点)において、エンドユーザーが購入可能な車種は本国アメリカでもわずか4車種、「S・3・X・Y」(セクシー)と称するモデルS、モデル3、モデルX、モデルSしかありません。(米国では、今年後半に納車が始まる予定の電動ピックアップトラックのサイバートラックや、昨年12月に一部法人への納車が始まった電気トレーラー、テスラセミがある)
このわずか4車種のうち、かつては日本でも販売していたプレミアムセグメントのセダン・モデルSとSUVであるモデルXは、一昨年に改良版へのモデルチェンジし、この製造が米国でのみ実施されている関係で、まだ日本ではテスラから購入することは出来ません。(予約は可能)
しかしながら、エントリーグレードのセダン、モデル3や、今年には内燃機関車を含めても世界で最も売れるクルマになる可能性もあるSUVタイプのモデルYが去年6月に発売され、更に最も売れ筋であるSUV自動車タイプで航続距離が長いモデルY LR(ロングレンジ)が2023年4月に注文可能となり、購入に際しては、非常に良い環境が整いつつあります。
テスラ購入に際しての価格やコスト面で気をつけるべきポイントは以下のとおりです。
- 販売会社のないメーカー直販なので激しく価格変動する
- 完全電気自動車なので補助金や税金面では非常に有利
- 車の構造が単純なので、メンテナンスや維持費もガソリン車と比べて安価
価格変動(ダイナミック・`プライシング)
これは、このブログでも別ページでその履歴をご紹介しているように、「価格が動かないことのほうが珍しい」という状況です。下のグラフが、2021年1月からの日々のモデル別価格変動を表したものですが、特に2022年はロシアによるウクライナ侵攻やコロナ禍、サプライチェーンの混乱による半導体不足などの影響により、大幅に値上がりしました。

一方で、2023年に入って物価高騰の影響もあり他メーカーが自動車の価格を続々と上げる中で、テスラは逆に世界中でクルマの販売価格を大幅に値下げしました。また、日本ではまだですが、米国や欧州などではさらに2023年4月に入って第2段階目の値下げの動きもあります。
こうしたダイナミックな値付けが実現できるのは、メーカー直販かつオンライン注文のみというテスラ特有の販売形態だからです。
つまり、知っておきたい事は常に価格の状況を見ておく必要がある、ということです。日本国内だけでなく世界中で、非常にダイナミックに価格を上げ下げしますので、なるべく安価に購入しようと思う場合には価格動向も気にしながらということになります。
米国はカリフォルニア州フリーモント工場や、現在建設中のギガテキサス工場で作られるクルマですが、特に日本国内に入ってくるのは中国のギガ上海工場製ですから、中国国内のテスラの値動きに注意が必要ということになります。
また一つ付け加えておくと、実はテスラが世界で売っている市場の中で、中国についで安く販売しているのが日本市場なのです。中国は新興のEVメーカーがひしめく世界で最も競争の激しい市場なので、十分理解できるのですが、日本ではテスラは売れてない上、世界ではマイナーな右ハンドル市場ということもあるのですが、不思議なことに非常に安価な価格設定になっています。(補助金などを除く為替は2023年4月現在)
補助金・税金
ダイナミックな価格設定に対して、補助金や税金面ではBEV(Battery Electric Vehicle:バッテリーのみで走る自動車のこと)の環境性もあり、非常に優遇されています。
自動車にかかる税金は大きく購入時にかかる税金と、毎年かかる自動車税に分かれますが、購入時は登録印紙税を除いて非課税、毎年5月頃に請求がくる自動車税はすべての自動車区分のうち最安の税額(要するに軽自動車と同じ)区分に位置づけられます。
項目 | 概要・備考 | 実際の費用 |
税金 | 自動車税(購入時) | 非課税 |
自動車税(ランニング/年) | 初年度6,500〜以降25,000円/年 | |
環境性能割 | 非課税 | |
自動車重量税 | 非課税 | |
登録印紙代 | 2,700 | |
補助金:国制度 | CEV(65万円) | ▲65万円 |
補助金:地方自治体 | 地方自治体による(東京都は60万円) | 0〜▲65万円 |
補助金は、その時々の施策に連動するので一概には言えませんが、現時点(2023年4月)では、国の補助金が少なくとも65万円ということになっています。
加えて、地方自治体独自の施策も上乗せされることもあり、東京都の場合には環境性能の高い自動車に対して独自の補助金を出していますので、詳しくは以下のリンクを参照ください。
メンテナンスコスト
電気自動車の部品点数は、普通のガソリン車に比べて半分〜7割程度と言われています。ということは必然的に必要なメンテナンスの手間や費用も少なくて済むということです。
特にテスラは、自動車の車体を超大型鋳造機「ギガプレス」で一体製造(その部品をメガキャスト・メガキャスティングという)し、品質性能向上はもとより、製造時間の短縮やコストの削減、メンテナンスフリーにしようとしています。現在はモデルYのリアとフロントの部品をメガキャスティングで製造しています。
また、車種や購入時期にもよるのですが、例えばモデル3RWDの場合、新車としての購入から4年間、8万kmまで基本的に保証されますし、バッテリーとモーターについては8年間16万kmという長期の保証も付きます。もちろん通常の使用で保証除外項目に抵触しない限りという条件です。
また、実際のトラブルやバッテリー劣化の状況、メンテナンスコストなどについては以下のリンクも参考にしてください。
すべてオンライン
これも、テスラを購入する際にこれまでの商習慣と違うので面食らう部分です。簡単にいうと良くも悪くも「すべてがオンライン」ということです。
テスラ購入に際し「オンライン」に関する注意点は以下のとおりです。
- オンラインで注文が完結するので、十分な吟味と準備を
- ソフトウェアも空から降ってくる
- 修理でさえオンラインで解決する場合も
オンラインでの注文
テスラの購入は、オンライン(テスラのWEBページで注文ボタンをクリックする)だけです。都心にいくつかショールームもありますが、そこで注文する際でも、ショールームのPCでテスラのWEBページにアクセスしてオンライン注文します。つまり、通常のディーラーであるような販売員との価格交渉は一切ありません、というかできません。
コミュニケーションもオンライン中心で、SMSやメールなどのやり取りで終わる場合がほとんどです。
クルマの注文に関しては、通常の販売会社やディーラーの営業マンでなされるようなやり取りはありません。もちろん、注文前には色々教えてくれる営業マンや、注文後はいろいろなニーズを聞いてくれるデリバリースタッフは付きますが、あくまで手続きはすべてオンラインで終了します。
オンラインの注文時に手数料(2023年4月現在1万5千円:この価格も変動します。またあくまで注注文手数料なので車両価格にも充当されませんしキャンセルしても返却されません)をクレジットカードで決済したのち、1週間後まで仕様変更が可能で、その後製造工程に入っていくというのが通常の流れです。
1週間以上経ってから注文内容を変更することももちろん可能なのですが、その場合は改めて「後ろに並ぶ」形になります。
OTAアップデート
テスラはスマートフォンのようにアップデートするクルマとして有名です。OTA(Over The Air)アップデートで自動的にバージョンアップされたソフトウェアが「降って」きます。
このアップデートはかなりの頻度で、世界中で色々なバージョンがいろいろなタイミングで配信されます。
テスラ車は標準で携帯電話ネットワーク(LTE)に接続する装備が備わっており「プレミアムコネクティビティ」サービスに加入している場合には、常にこのLTEに接続して、地図の更新やリアルタイムの渋滞情報の提供などが可能です。
一方で、このOTAはそのソフトウェアのファイルサイズが非常に大きいためWiFi接続しているときにしか実施できません。
つまり、テスラ車を快適に使おうと思うとLTEに接続する=プレミアムコネクティビティサービスに加入する(990円/月)のが必須ということと、必ず「WiFi接続」が必須となります。
戸建ての場合は、自宅のインターネット回線にWiFiルーター経由で接続すればよいのですが、マンションなどの場合にはテザリングの活用など少し工夫が必要となります。
また自動車のソフトウェアだけでなく、テスラを使う場合に必須となるスマホのアプリも頻繁にアップデートし、機能向上していきます。これら、ソフトウェアのアップデートによる機能の追加や更新は他の自動車メーカーでは考えられない価値になっています。
修理もオンライン
テスラはほぼネットワークに常時接続しています。つまり、クルマに不具合があった場合には、遠隔でその様子がわかるようになっています。

これは、以前納車100日目の不具合ということでご紹介した時のSMSのやり取りです。
ご覧になってわかるように「遠隔診断」でチャージポートのアラートを確認しています。
この故障はメカニカルな故障でしたので、サービスセンターに行く必要があったのですが、状況を遠隔診断してもらい、その原因によってはクルマの再起動を指示され、それで直る場合もあります。
こういうように、すべてがインターネットにつながり、コミュニケーションの中心はオンラインです。つまり、知っておきたいことはオンラインが苦手だと少し不便だということと、インターネットに繋がる環境が必須ということです。
充電とメンテナンス
テスラ購入時に気になるポイントとして「電気自動車ゆえの充電」と「メンテナンス」でしょう。この点で知っておきたい3つのポイントは以下のとおりです。
- 心配不要、充電はなんとかなる
- すべてが電動なのでなにかしら壊れる
- サービスセンターとの距離を重視
充電の方法と特徴
テスラは電気自動車ですから、充電が必須となります。ただ、充電に必要なのは「電気」で、この電気は大抵のところにありますので、テスラとの接続アダプター(急速充電用のCHAdeMOアダプターと普通充電コンセントに使うモバイルコネクターがある)さえあれば、なんとかなるという感じです。この安心感を支えているのは、日本国内でもどんどん増えつつある独自の急速充電網であるスーパーチャージャーと、テスラ車が示す航続距離の正確さです。
この航続距離の推定には、クルマの加減速はもちろんの事、高度や風速、温湿度なども加味して推計し、その予測をリアルタイムにクルマに表示しますので、電欠に対する不安を払拭してくれる安心感があります。そして、非常に重要なことはこの予測がかなり正確だということで、おそらく広大な国土を持つ米国での環境や経験が活かされているのかと思います。
テスラの充電方式を整理するといかの6つの方式があります。
これは経験的なことなのですが、自宅にはウォールコネクターもしくはモバイルアダプター+200Vコンセントが有るに越したことはありません。ただ、それほど頻繁に遠出しないのであれば、CHAdeMOの充電設備は結構普及している上に、(今後はわかりませんが)いまのところ、あまり電気自動車が売れていないこともあり、充電スポットも空いていることが多い印象です。
アダプターさえ確保できれば、充電についてはさほど心配することはないという印象です。
また、2021年後半から欧州(オランダ)でこれまでテスラ専用であったスーパーチャージャーを他車にも開放するプログラムが開始されています。欧州に続き米国でも他社開放が予定されています。
すべてが「電動」
車内を見渡しても、手動で動かすのは「ハザードボタン」、「バックミラー」、両サイドのストールとハンドル及びスクロールボタンくらいで、その他は概ね「電動」で動きます。
ギガ上海製モデル3では、エクステリアのミラーもトランクもフランク(閉じるのは手動)も、そして充電ポートの開閉もすべてが「電動」です。
ソフトウェアの不具合であればOTAでアップデートして完全に修理することができますが、メカニカルな不具合や故障では、部品の交換や修理が必ず必要になります。
そして、当たり前ですがこの「電動」部分は非常に壊れやすいと言えると思います。
100日目に壊れた充電ポートの蓋の詳細は以下です。
200日目に壊れたトランクのパワーストラットの様子は以下です。
詳細は、以上の2つのエントリーを確認いただければいいのですが、購入の際に知っておくべきは必ず何かしら壊れる、ということなのですが、もちろんこれらは保証の範囲にある場合がほとんどです。
サービス・メンテナンス体制
残念がら、テスラのオフィシャルなサービス拠点は2023年4月時点でわずか6拠点です。このサービス拠点の少なさがテスラ購入の際に最も注意すべきポイントだと思います。

ガソリン車でも新車で購入して壊れることは結構な頻度で有ると思いますが、前にご説明したようにテスラは部品点数は少ないとはいえ、電動部分が非常に多いので何かしら壊れることをあらかじめ想定しておく必要があります。
一方で、このサービス拠点の少なさをカバーしているのが「モバイル・サービス」と呼ばれるテスラ独自のメンテナンス体制です。これは修理が必要な場合に、例えば家の駐車場など必要な場所まで出張して修理してくれるサービスです。実は軽度な修理やメンテナンスの場合にはこのモバイルサービスで十分な場合が多く、これを一度体験すると非常に良いサービスだということがわかります。
とはいえ、本格的な修理が必要な場合にはサービスセンターに入庫が必要になりますので、利用場所とサービス拠点との関係については十分注意、理解した上でのご購入をおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。これからテスラを購入を予定している方の少しでもの参考になれば幸いです。
テスラ関連の最新記事を毎日AM7:00にアップしていますので、過去のニュースはこちらを参照ください。
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