テスラが中国政府に掛け合い上海に自社工場「ギガファクトリー上海」を建設しEV生産を始めたのが2019年、その後2020年後半にこのギガ上海工場からモデル3が日本にも輸出されるようになりました。
2021年型へのアップグレードを経て2021年3月20日に2021年型モデル3SR+(スタンダードレンジ・プラス、今のグレードでいうとRWD)が納車されて早や2年が経過しましたので、ここでバッテリーの劣化具合やこれまでのトラブル、メンテナンスや電気代などの維持費などについて簡単にご紹介したいと思います。
これから新しくテスラ車を購入しようとされている方の参考になれば、と思います。
2年経過時点でのバッテリー劣化
2021年3月20日にモデル3が納車されてちょうど2年経過した2023年3月20日に、改めてバッテリーの劣化状況について確認してみました。それによると、満充電時の航続距離表記は405km、その時点でのバテリー残量(OBD表示:Nominal Full Pack)は51.6kWhという結果です。
時期 | 満充電時の航続距離 | 満充電時のOBD表示 | 累計走行距離 |
2021年3月 | 425km | (?) | 20km |
2022年3月 | 418km | 53.4kWh | 4,700km |
2022年9月 | 411km | 52.2kWh | 7,100km |
2023年3月 | 405km | 51.6kWh | 9,200km |
つまり、この結果からは納車時点から満充電の際のバッテリーが95.3%、つまりおよそ5%の劣化ということになります。これが多いのか少ないのか、個体差もあるとは思いますが、これまで言われているのは最初の2年間は比較的バッテリー劣化が早く、その後緩やかになるとのことです。
実際のところ、EVであるモデル3購入当初は航続距離、電欠とバッテリー劣化への不安がありましたが、この点については(自宅充電設備がある前提ですが)全く問題がない、という状況です。
特にこのモデル3(とモデルY)のエントリーグレードは、中国CATL社製のLFP(リン酸鉄型)というバッテリーが搭載されている一方で、ロングレンジやパフォーマンスは三元系と呼ばれるバッテリーが搭載されています。
パナソニックやLG化学がテスラに提供している三元系リチウムイオンバッテリーはエネルギー密度、充放電効率が高く、耐熱性も高いのですが高コスト、中国CATL製リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの利点は、低コスト、安定した構造、長い充放電サイクル寿命の一方で、エネルギー密度が低く、充放電効率が低く、低温での性能が低いとされています。
そして実運用上非常に重要な点があり、このLFPバッテリー搭載車のテスラ提供のマニュアルに以下のような文言が掲載されています。
LFPバッテリー搭載車両の場合、通常走行であっても充電制限を100%に維持し、少なくとも週1回はフル充電して100%にしておくことを、Teslaでは推奨しています。Model 3を1週間以上に渡って駐車したままにした場合、通常走行でドライブし、できるだけ早く100%まで充電することをTeslaでは推奨しています。
これに加え、可能な場合はセントリーモードを無効にして駐車することによりModel 3を定期的に「スリープ」させるようにしてください。セントリーモードが必要ない場所で自動的に起動しないように、「自宅を除く」、「勤務先を除く」、「お気に入りを除く」の各設定の仕様を考慮してください。
上記のガイダンスに従うと、航続距離を最大限に伸ばし、充電状態と推定航続距離を判断する車両の能力を向上させることにつながります。
つまり、LFPバッテリーはそれまでの三元系バッテリーと違って、常に満充電を保つような運用が理想のようで、特に自宅に充電設備がある場合においては基本的に「充電アダプタをつないだままにしておく」ことが推奨されています。
この「常に100%」という運用が自宅充電設備がある場合には可能で、結果として常に100%の充電が維持され航続距離や電欠への不安がなくなる、という安心感につながっています。
様々なトラブルとその後
このサイトではモデル3導入からのトラブルを都度ご報告しています。特に納車100日目、納車200日目のトラブルの詳細は以下のエントリーをご確認いただければと思います。
実のところ、この200日目以降については、ハードはもとよりソフトウェアのトラブルもほぼなくなってしまい、逆に記事にするネタに困っているというのが実情です。特に、ハードは初期不良的なものでしょうが、ソフトウェアについては、都度アップデートされていくことで機能追加はもとよりその挙動の安定感が以前とは比較にならないくらい増しているように感じます。
テスラのアプリから、サービスセンターやモバイルサービスの履歴を見ることができます。(ちなみに、この機能も以前からあったわけではなくアプリのソフトウェア・アップデートで表示されるようになりました。テスラの凄いところの一つです。)
このうち実際にメンテナンスされたのは、2021年6月と9月の2回で、それ以外はリコール対応(といっても発煙筒をダッシュボードから外に出すスポンジをもらっただけ)と、大阪のスーパーチャージャーに行ったときに「勝手に」タイヤ空気圧を見てもらったときだけです。
ハードウェアの初期不良は、テスラでなくとも一定程度はあると思いますし、ソフトウェアについては現時点では非常に安定的に稼働している、という印象です。
少なくとも当初感じていたEVのゆえの不安は現時点ではまったくない状況です。
維持費
テスラの場合、維持費は2つあって一つはメンテナンスコスト、もう一つは電気代です。もちろんその他にも自動車税や場合によっては駐車場代などもあるでしょうが、今回はメンテナンスと電気代を見ていこうと思います。
メンテナンスコスト
これは非常に恐ろしい、と言っても過言ではないと思うのですが、これまでに掛かったメンテナンスコストはなんと「ウォッシャー液」だけ、それも1回継ぎ足し分の298円(税抜)です。上記でご紹介させていただいた、サービスセンターの修理などはすべて無料ですし、そもそも2年程度では定期的に交換する必要のあるものがほぼない、という状況です。
もちろん、今後、エアコンのフィルターやワイパーブレード、補機バッテリー(12Vバッテリー)やタイヤなどの交換も必要になると思いますが、そもそも構造が単純で、フルード系の交換がないというのがEVの良いところだと思います。
電気代
モデル3を維持する上で最も必要となるのが、電気代でしょう。これもサービスの状況と同じようにテスラアプリで履歴を確認することが可能です。
これを見ていただくとお分かりのように、2022年の1年間で掛かった電気代はわずか16,851円です。
少し注意が必要なのがテスラ購入時に紹介プログラムがあり、当時は1500km分のスーパーチャージャー充電特典がついていたので、グラフの赤色の部分は無料で費用が掛かってません。
とはいえ、電力量が全部で1,056kWhなので仮にスーパーチャージャーの無料分をなしにして、全部が30円/kWhとして計算すると3万円強となります。
1年間で4,500km程度走るので、1kmあたり6.66円程度、10kmで66円、20kmで132円というような感じで、明らかに内燃機関車より安価になっています。
ここまで、2年経過した2021年型ギガ上海製モデル3スタンダードレンジ・プラスのバッテリー劣化、トラブル、維持費などの状況を簡単にご紹介しました。今後新しくテスラ車を購入しようとしている方の参考に少しでもなれば幸いです。
正直に言いますと、「なぜ皆このクルマを買わないのか?」という疑問しかありませんし、おそらく内燃機関にこだわってる自動車メーカーは早晩ひどい状況になると容易に想像できる出来だと感じたこの2年間でした。最後までお読みいただきありがとうございました。
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