年間2千万台を目指す世界No.1電気自動車メーカー、テスラの常識破りのクルマ作り

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Credit:Tesla
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テスラ車の生産設備であるギガファクトリー、クルマの作り方を根本から変えてしまうギガプレス、メガキャスト、そしてそもそもハードウェアからソフトウェアへ、というテスラが既存の自動車メーカーと一線を画す技術は推挙に暇がありません。

今回は、その世にも稀に見るテスラの型破りなクルマ作りについて簡単にご紹介してみたいと思います。

キーワードは量産化

テスラのクルマ作り(クルマ以外もかもしれませんが)のポイントは量産化ということに重点を置いています。というか、すべては量産化(よくイーロン・マスクが「スケーリング」と表現する)に向けて、どう取り組んでいくかという見方をすると、何をしようとしているかの理解が進むと思います。

これは、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行、つまり内燃機関からバッテリー電気自動車への移行を進めて、本気でその持続可能性を実現しようとしているということです。一部のマニアックなニーズに応えるためではなく、ということです。

イーロン・マスクCEOは2030年に年間2千万台のテスラ車を製造・販売する「志」を掲げており、今年の1月に実施された2021年度の決算発表の際にも、その実現に向けて特に今年である2022年は「スケーリングとアウトプット」(拡大と生産量)の年という位置づけで、新製品というより量産化を目指すと明確に言っています。

2021年累計で年間93万台ですから、2022年は年間で約150万台の製造販売を目指すということになります。この前年比50%増のペースを維持するためには、クルマそのものの魅力でユーザーニーズに適うのはもちろんのこと、様々な取り組みで生産効率を高める必要があります。

2030年に年間2千万台の意味

世界で2021年累計台数として最もクルマを製造販売した自動車メーカーはトヨタ自動車で1049万台という実績ですから、この2千万台という数字が非常に高い「志」というのが分かると思います。

イーロン・マスクCEOは以前フィナンシャルタイムズ紙とのインタビューにおいて、この年間2千万台の意味を以下のように説明しています。

「「2030年までに年間2,000万台」というのは、約束ではなく「志」です。このような目標を掲げる理由は、世界には約20億台の自動車とトラックがありますが、持続可能なエネルギーと電動化に本当に貢献するためには、少なくとも年間1%の車両を電動に置き換えなければ意味がないと思うからです。年間2,000万台という数字はそこからきているのです。」

つまり、20億台の1%を電気自動車に置き換えるため、ということでこの「志」が掲げられていることから考えても、イーロン・マスク、ひいてはテスラが本気で再生可能エネルギーを使った持続可能なモビリティの実現を考えているということがよく分かるコメントです。

製造工場も商品

テスラは自社で工場を建設する際に、つねに製造工場(ギガファクトリーと称する)こそが商品、ということを強調しています。

2030年に年間2千万台のEVを生産する目標を達成するためには、単純計算で少なくとも1工場あたり100万台生産できる工場(テスラではギガファクトリーと称している)を20か所作る必要があります。現在、テスラ車を製造しているのは、主に米国カリフォルニア州フリーモント工場、中国上海にある2019年9月からのギガ上海工場、今年3月に稼働開始した欧州初の製造設備ギガ・ベルリン、そして世界で最大の建築物と言われる米国テキサス州オースティンにあるギガファクトリー・テキサスの4ヵ所です。(2016年に建設された米国ネバダ州のギガファクトリー1でも一部生産)

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ギガファクトリーテキサス
https://youtu.be/yzLdszSNhUE

このうち、最も古い米国フリーモント工場は、かつてGMとトヨタが米国内で作った自動車製造会社NUUMI(New United Motor Manufacturing)が建設し操業していた自動車製造工場を2010年5月に居抜きで、それも従業員付きで取得してモデルSの量産化をはじめたという工場です。そしてこのフリーモント工場が今や北米で最も生産効率が高い自動車工場とされています。

2022年11月時点で年間100万台以上の生産能力をもっているはギガ上海だけですが、各工場におけるノウハウやイノベーションはその後新設された工場にも活かされますので、ベルリンもテキサスもそのレベルに到達するのは時間の問題でしょう。

そして既存工場で最も先進的な技術を採り入れた最新の工場がギガファクトリー・テキサスです。2022年4月初旬、この工場のお披露目イベント「サイバー・ロデオ」が開催されました。そこではこの工場で生産される予定の新型4680バッテリーセルや、バッテリーを自動車の構造体として利用するストラクチャラル・バッテリーパック、そして来年生産納車が予定されているサイバートラックなどが展示されました。

この最新のEV製造工場が、入り口から出口までテスラ車の垂直統合型の製造に最適化されていることを、イーロン・マスク氏は「すべてが、一つの屋根の下に収まり…この建築物は、これまで地球上で見たこともないような最先端の自動車工場です。」と表現しています。

クルマづくりの革命、ギガプレスとは?

テスラのクルマ作りで、最も特徴的といえるのがこの「ギガプレス」です。一言で言うと、車のプラットフォームをなるべく少ない部品で作るための超大型アルミ部品鋳造マシンのことを「ギガプレス」と称しています。

テスラに納品されたイタリアIDRA社 ギガプレス

この超大型鋳造機ギガプレスも、スケーリングを実現するための既存自動車メーカーが実現できなかったイノベーティブな取り組みです。イタリアのIDRA社が製造しており、ギガプレスで製造されたアルミ合金大型部品をメガキャスティングと呼んでいます。

このギガプレスで製造された大型部品は、現在のところ電動SUVのモデルYのアンダーボディのリア部分に実際に採用されています。このリアのアンダーボディ部品は、およそ70個もの部品を集約して一つにまとめたものです。

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Credit:Tesla

そして間もなくこの部品をリアだけでなくフロント側のアンダーボディにも採用するべくギガ・ベルリンで取り組みが進められています。

こうした、クルマの製造方法は他メーカーでも過去から幾度もトライされていたみたいですが、実際に普及車で実現したのはテスラが最初です。

この成功を見て、今や電気自動車市場として一大勢力を築いている中国メーカーがこぞって導入を考えたり、ボルボやGMなどもこのギガプレスによるメガキャスティングの採用を検討しているようです。

ヒト型ロボット「オプティマス」を使って

サステイナブルなモビリティの実現と同時に、テスラとイーロン・マスクは人間の単純労働からの開放を目指したヒト型ロボット「オプティマス」の開発を進めています。2022年9月30日に開催された人工知能イベント「AIデー2022」で実物が初めてお披露目されました。

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中国国際博覧会で展示されたヒト型ロボット・オプティマス
https://youtu.be/89yAKzLwBGc

実はこのオプティマスの導入が最も早いと目されているのがテスラの自社工場だということです。つまり、「スケーリング」を実現するため工場における人間の労働から24時間休みなく働き続けるロボットへの置き換えです。

このオプティマス制作のポイントとされているのが「ヒト型」でそのスケールも人間に近しいものだということです。当たり前ですが、世界は「人間用」に作られています。同じ思想で、大量生産するロボットを「ヒト型」にしておけば、人間が実際にしている作業を置き換える際に有用であろう、という思想です。

ハードウェアからソフトウェアへ

従来自動車製造は多層下請け構造が主流で、電動化に消極的なトヨタ自動車は関連する下請け会社が6万社あるといわれています。テスラが自社での開発・製造・組み立てという垂直統合型で進められるのは、部品点数で内燃機関車の3分の2といわれる電気自動車を、それも非常に少ない車種(現時点では事実上4車種のみ)作っているということが大きいと考えられます。加えて、メガキャスティングなどの手法によりさらに部品点数を減らすのもあります。

ただ、ここで忘れてならないがテスラが持つもう一つの顔「最先端のソフトウェア会社」です。

これまでテスラは他の自動車会社以上に度々「リコール」を届け出ていますが、この対応の大部分をOTA(Over The Air)アップデートという無線ソフトウェアアップデートで済ませていますので、既存自動車メーカーのリコールとは一線を画したものとなっています。全部ではないにせよ、テスラはハードの不具合をソフトウェアで解消することができるのです。

こういう不具合対応だけでなく、ソフトウェアの力でハードを省略可能にしているのがテスラの自動運転技術を支えている「テスラビジョン」というカメラ映像だけで周辺状況を把握してクルマを制御する仕組みです。これまで(というか今でも)自動運転を実現するために、既存自動車メーカー各社はカメラはもちろんの事、LiDAR(Light Detection And Ranging:光による検知と測距)センサーやミリ波レーダーなどを複合的に利用して実現する仕組みです。

一方で、テスラがこの手のセンサー類を一切利用しないカメラ映像だけで自動運転や自動制御を実現しようという独自のアプローチをしています。これに加えて、車の至近にある障害物などを感知する超音波センサー(USS)まで、このテスラビジョンに置き換える決断をして、直近製造のテスラ車にはこれまで標準で付けられていたUSSは取り付けられていません。

このカメラ映像をソースにすべてを制御するという独特のアプローチが実現できるのは、テスラが単なる自動車メーカーではなく先進的なソフトウェア会社でもあるからです。今や10万人以上のベータテスターと称するテスラ車オーナーが実際に街中で毎日運転して貴重な実映像データをテスラに送り、テスラはこの膨大なカメラ映像を機械学習させるためのスーパーコンピューター「Dojo」を実際に作ることができる超ハイテク企業なのです。

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テスラの自社製スーパーコンピュータ Dojo
https://youtu.be/FLZ6dYQpzeg

2030年に年間2千万台の自動車製造という一見途方もないような目標でも、もしかするとテスラなら実現できるのでは?というところまで来ています。少し前まで、モデル3の量産化に四苦八苦しイーロン・マスクが「生産地獄」と呼んで巨額の赤字を垂れ流していた企業が今や世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車の稼ぐ純利益以上を稼ぐ会社になっているのですから。

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