急成長を遂げ、テスラを超えた中国自動車メーカーBYDとは

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Credit:BYD
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BYDはテスラとほぼ同時期に自動車販売を開始しましたが、世界的なEVスーパースターへ至る道は大きく異なるのもでした。

Build Your Dreams

この10年間で、多くの中国自動車メーカーが急成長を遂げ、中国国内市場でより多くの(そしてより優れた)自動車を製造・販売するようになっただけでなく、中国の国境を越えてグローバル・ブランドに成長してきました。そして、その多くはガソリン車でこの大きな波を起こしているわけではありません。そのようなサクセスストーリーのひとつがBYD(Build Your Dreamsの頭文字をとったもの)で、約30年前に設立され、当初模倣しようとしていた既存自動車メーカーに挑戦し、さらには今やそれらのメーカーを凌駕している状況です。

BYDは30年前に設立され、当初は模倣しようとしていた既存大手自動車メーカーに挑戦し、現時点ではそうした既存大手自動車メーカーを凌駕しています。2000年代初頭からの中国の同業他社の多くと同様に、他の国々は当初、この中国の自動車メーカーを真剣に受け止めていませんでした。

BYDの2023年ラインナップ

劇的な変化

その後数年間で、BYDは間違いなく、中国の比類なきグローバルなEV拡大の尖兵となりました。2020年の販売台数が約42万7,000台だったのですが、2023年には世界で300万台以上を販売しています。また、2022年3月以降、生産とリソースを内燃エンジン車からEVにシフトすると発表しています。

そして今週、BYDはEVの世界販売台数でテスラを上回ったことで国際的なニュースとなりました。

BYDとは一体どういう企業なのか?そしてBYDは一体どんなクルマを作っているのでしょうか?最大の電気自動車メーカーの世界を初心者にもわかりやすく解説してみます。

BYDの起源

BYDは1995年に中国で設立され、わずか20人の従業員でスタートしました。3年後の1998年にはオランダのロッテルダムに初の海外事務所を開設し、2000年には中国初の工業団地で本社の建設を開始しました。中国・深センの平山区にある工業団地は2007年に完成し、以来本社として使用されています。BYDの親会社であるBYD Company Ltd.は、2011年にロサンゼルスに北米本社を開設しました。このBYD Company Ltd.は、ソーラーパネル、産業機器、電子部品など多くの製品を製造しています。

BYDのF3M 初期のセダンモデル

同社は当初、自動車メーカーではなく、ノキアとモトローラに携帯電話用のリチウムイオンバッテリーを供給するのが最初の2つの大きなメーカーでした。2003年に中国の西安秦川汽車を買収したのをきっかけに、自動車メーカーへの道を歩み始めています。

2005年には、最初の生産モデルであるF3コンパクトセダンを市場に投入し、2008年にはF3DMと呼ばれるプラグインハイブリッドモデルを発表しました。興味深いことに、この初期のPHEVはBYDが2008年のジュネーブ・モーターショーで発表したもので、すでにBYDの国際的な野心を示唆していました。しかし、当時でさえ、その品質、デザイン、技術には疑問があり、海外からはほとんど相手にされていませんでした。

2008年、ウォーレン・バフェット率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが、主にバッテリー事業への関心から2億2,500万ドルのBYD株式を購入しました。その後、中国政府によるEVへの莫大な投資と優遇措置により、BYDをはじめとする中国の自動車産業は、パンデミック後に初めて明らかになったサプライズ的な世界的EVリーダーへと成長しました。

現在、BYDは世界中のさまざまな企業や政府と、電気自動車の普及、電気自動車用バッテリーの原材料の調達、大規模な事業拡大を支える製造施設の建設など、さまざまなプログラムや協定を結んでいます。

BYDの販売車種とブランド

BYD 唐(Tang)

BYDは乗用車を販売しているだけではありません。小型のシティカーからバスやトラックまで、さまざまなタイプの車両を製造・販売しています。これらの車両のほとんどは、プラグインハイブリッドまたは完全な電気パワートレインを搭載しています。長年、中国では「電気自動車」の販売台数で世界一とよく言われていましたが、その数字にはハイブリッド車も含まれることが多く、他の国では一般的にそうではありません。

乗用車はBYDの名で製造されているため、BYDのバッジが付けられていますが、いくつかの別ブランドもあり、それぞれ独自のバッジとアイデンティティを持っています。サブコンパクトハッチバックのBYDシーガルが最小のEVで、コンパクトなドルフィンがそれに続きますが、セダンが欲しい場合は、コンパクトな秦、シール(テスラモデル3およびフォルクスワーゲンID.7のライバル)、および大型の漢でカバーできます。クロスオーバーファンなら、Atto 3、宋(Song)、唐(Tang)から選ぶことができます。

BYD ドルフィンとシール

デンザはBYDの高級ブランドのひとつです。当初はメルセデス・ベンツとの合弁会社だったデンザは、現在N7、N8クロスオーバー、D9高級ミニバンの3モデルを展開しています。

仰望(Yangwang)もBYDのラグジュアリーブランドですが、こちらは欧州のプレミアムメーカーに直接挑戦する位置づけで、スポーツカーのU9と大型SUVのU8(写真)は100万元(約14万1000ドル)以上の価格から提供されています。

仰望(Yangwang)のU8

また、BYDは方程式豹(Fangchengbao)という新しい乗用車ブランドを発表しました。このブランドは「プロフェッショナルでパーソナライズされたアイデンティティに特化」しており、オフロード走行やサーキット周回など、特定の運転に特化したプラグイン車を提供する予定です。

BYDにとって、商用車も重要です。BYD M3(欧州ではETP3と呼ばれる)のような小型の電気バンを製造しているほか、独自のヘビーデューティ・プラットフォームで、さまざまな作業に対応できる大型トラック(クラス5、6、7、8)も製造しています。BYDはまた、米カリフォルニア州ランカスターの工場を通じて、米国を含む世界数か所で電気バスも製造しています。

BYDがBEVでテスラを超える

BYDが初めてテスラを上回ったのは2022年ですが、その販売台数にはプラグインハイブリッドとEVの両方が含まれていたため、完全に公平な比較ではありませんでした。2023年はBYDが電気自動車の販売台数を急増させた年であり、この年の第4四半期にはテスラの48万4500台に対して52万6400台のBEVを販売し、テスラを純粋に電気自動車で上回りました。

BYDが進出している市場

BYDはまず、中東、南米、アフリカで自動車を販売することで、中国国外でのプレゼンスを拡大しました。創業以来、当初数十人だった従業員数は29万人を超え、世界40カ所に支社を展開(2021年12月下旬)しています。

BYDは現在、最初に進出した前述の地域以外にも、一部の欧州および東南アジア市場、英国とオセアニアで乗用車を販売しています。欧州では19カ国に進出しており、ハンガリーにはすでに電気バスを製造する工場があるほか、同国に2カ所目の製造拠点を開設する計画もあります。

米国で自動車を販売していない

カリフォルニア州ロサンゼルスに本社ビルがあるにもかかわらず、現在は販売していません。米国は現在、中国製自動車に27.5%の厳しい関税をかけており、その影響と米中間の貿易および政治的緊張が続いているため、BYDはまだ米国で販売されていません。

しかし、BYDはすでに北米に進出しており、メキシコで販売台数を伸ばしています。また、メキシコでの工場建設も視野に入れていると言われており、そうなれば理論上は関税をかけずに米国で自動車を販売することが可能になります。

世界販売台数

BYDのEVおよびPHEVの販売台数は、2022年の185万台から2023年には302万台に大幅に増加しました。これは62%増で、BYDのプロジェクト・ポートフォリオと新市場への拡大を続ける強い意欲を考慮すると、力強い成長傾向が維持されることを示しています。

自社でバッテリーを製造

BYDは世界最大級の二次電池サプライヤーであり、EVに搭載するバッテリーパックはすべて自社で製造しています。また、他の電気自動車メーカーにも自社が製造するバッテリーを供給しており、メルセデス・ベンツが2025年からBYDのバッテリーを搭載したEVの製造を開始するという噂もあります。

BYDは長年にわたり、鉱物の採取から最終的なバッテリーの組み立てまで、自社で完全なサプライチェーンを所有するまでに成長しました。これにより、同社はバッテリーの価格を抑えられるだけでなく、研究開発にも投資できるようになりました。BYDのバッテリー技術研究の成果は、先進的なBYDのブレードバッテリーです。BYDのブレードバッテリーは、最大エネルギー密度よりも火災に対する安全性を優先して開発されています。

車両価格と品質

BYDのクルマは、欧州のレビュアーから高い評価を得ています。インテリアとエクステリアのデザインは、2010年代のひどい状態から大きく進歩しています。

たとえばBYDシール(Seal)です。英国のオートカーは、インテリアを「ミニマルで渋いモデル3よりも視覚的に魅力的」と評価し、デュアルモーターAWDのシールが同様のスペックのモデル3を下回ると述べています。また、ヒョンデIONIQ 6やBMW i4との競合車としても挙げられています。同様に、コンパクトなBYDドルフィンは、わずか26,195英ポンド(約481万円)からで、「非常に安い価格で小型EVクラスに長い航続距離と印象的な実用性をもたらす」と表現されています。

簡単に言えば、BYDのクルマは多くの競合他社よりもはるかに安い価格で、印象的な航続距離、技術、性能を提供しているようです。BYDは、欧州連合(EU)が独自に強化関税を検討しているほど、欧州の自動車メーカーにとって脅威となっています。

BYDは電気自動車業界の本命か

BYD Seal

間違いなく、そうでしょう。BYDの電気自動車はまだすべての市場で販売されているわけではなく、欧州と米国は「斬新な方法」でBYDを撃退しようとするかもしれませんが、BYDは中国の自動車産業がいかに優れているかの申し子です。今後、このブランドから多くの情報がもたらされることを期待しています。

この記事はこの投稿を引用・翻訳・一部補足・編集して作成しています。

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