CEOが語る、メルセデス・ベンツがテスラに価格面で追随しない理由とは?

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メルセデスにとって価格の安定が重要な理由と、テスラ規格の充電アダプターNACS採用の決断に至った経緯とは?

ドラスティックな価格変動はマイナスに

EVを購入する適切なタイミングを選ぼうとすることは、市場のタイミングを計るようなもので非常に難しいものです。テスラは、モデル3およびモデルYの価格を非常に頻繁にかつ、ダイナミックに変更し、自動車市場にダイナミックプライシングの概念をはじめて導入し、成功しました。最近では、フォードの電気自動車部門もこのテスラの動きに追随しており、F-150ライトニングやマスタング・マッハEの価格は、需要の大小に合わせてダイナミックに上下しています。

メルセデス・ベンツが次にこの小売価格変動ゲームのプレイヤーになるとは思わないでください。というのも、メルセデス・ベンツCEOのオラ・ケレニウス氏は以下のように語っているからです。

「あなたたちは常に、市場での需要と供給、営業状況を見ています。しかし、メルセデス・ベンツのようなブランドにとって、ドラスティックな市場価格の動きは通常、正しい姿ではありません。」

モビリティはゼロエミッションへ

メルセデス・ベンツは、バッテリー電気自動車EQEやEQSのような新型車を積極的に投入する一方で、新型Eクラスのような伝統的な車種はハイブリッド車のみとし、全車種を電動化することを目指しています。これはすべて、同社の「モビリティはゼロ・エミッションを目指さなければなりません。モビリティはゼロ・エミッションにならなければなりません。」という「Ambition 2039」の一環です。

しかし、世界経済の現状を鑑みるに、そのゼロエミッションへの転換は容易なものではありません。ケレニウスCEOによれば、世界の主要国ではインフレが進行し、利上げが続いているため、「マクロ経済が冷え込む」状況が生まれているとのことです。

「経済が『冷え込む』というのは、メルセデス・ベンツが現在進めているような企業の再出発には理想的ではありません。電動化だけでなく、自動車業界で進行している他のすべてのことに、私たちは何十億、何百億という資金を投入しているのです。そして、目的地は明確です。モビリティはゼロ・エミッションにならなければならないのです。」

経済成長圏に新製品を投入することは、その投資の一部を回収するのに役立ちますが、それはここ最近のちょっとしたチャレンジとなっています。このモビリティのゼロエミッション化、つまり自動車の電動化について中国は重要な役割を果たすはずでした。 こうした状況の中、ケレニウスCEOは以下のように分析しています。

「多くのウォッチャー、経済アナリスト、大学教授などは、コロナ後、中国はすぐにまた急成長すると考えていました。一方で、現在の中国市場はどうですか?横ばいです。自動車生産者として、そのような状況の中でどのように市場と戦っていくかを決めなければなりません。メルセデス・ベンツにとって、価格の安定は重要です。私たちが造る美しいマシンが、長寿命で、残存価値があり、そうであることを確信することは、私たちにとって最優先事項なのです。」
「価格面での安定を保つには、他の部分でも柔軟性が必要です。同じ生産ラインでEVから内燃機関へとシフトするメルセデス・ベンツの需要対応能力が鍵なのです。南東部とアラバマ州にある大規模な事業所では、両方の生産が可能です。だから、市場に合わせることができるのです。ドイツでも同じです。中国や世界中の他の地域でも同じです。ですから、私たちは生産の柔軟性を保ちつつ、電化が大幅に進む将来に備えているのです。」
「こういう背景から、メルセデスがテスラに倣って市場の需要に基づいて希望小売価格をダイナミックに変更することはありません。しかし、新たにテスラからは別のヒントを得ています。それはテスラの充電規格NACSです。」

テスラ充電規格NACSの採用

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テスラ充電規格NACSとCCS1の比較画像
Credit:Tesla

メルセデスは今年7月、テスラが米国で公開した急速充電規格NACSを採用し、現在の世界標準であるCCSから移行すると発表しました。

このNACSへの移行は、間違った充電アダプターで放置されることを望まない購入者から、市場に短期的な混乱をもたらすのではないかと懸念する声もあります。しかし、ケレニウスCEOはそれが問題にならないと確信して以下のように発言しています。

「私たちはどのような状況でもお客様の面倒を見るつもりです。」
「テスラとの提携は軽い決断ではありませんでした。メルセデスとして、北米で支配的なプラグになる可能性が最も高いシナリオは何かと考えました。慎重に分析した結果、中長期的な解決策としては、CCSよりもむしろNACSだろうという判断に至りました。」

ケレニウスCEOは、少なくとも短期的には、北米市場でCCSとNACSの「共存」があり、その一環として、メルセデス・ベンツは、今後の高級志向の充電ネットワークで両方をサポートすることを約束したと続けました。各充電器には2本のケーブルが用意され、アダプターは不要となります。

「私たちは、これがお客様から充電に関する不安を取り除き、安心をもたらすものだと信じています。そのために私たちはこのようなことをしたのです。」
この記事はこの投稿を引用・翻訳・一部補足・編集して作成しています。

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