テスラ、オートパイロット中の深刻な「ファントムブレーキ」問題

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市場前の取引で好調に始まったテスラの株価(TSLA)は2月2日、オートパイロット中の深刻な「ファントムブレーキ」問題にさらに注目が集まり、大きく下落しました。

2021年11月頃から、オートパイロット中に起こる危険なファントム・ブレーキ現象を報告するテスラオーナーが大幅に増加しています。

ファントム・ブレーキとは、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転システムが、正当な理由なくブレーキをかけることを表す言葉です。ファントムとは「幻(まぼろし)」や「亡霊」を意味する言葉で、何ら障害物や危険性がない状況にも関わらずクルマが勝手にブレーキを掛ける状態を言い、テスラ車に乗っていると、1度や2度の経験は誰しもしている現象です。

ワシントンポストが連邦政府の自動車安全データを分析したところ、テスラは2車線道路の対向車など、架空の危険に反応して不意にブレーキを掛けることがあり、これに怯えた所有者が過去3カ月間にわたってNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)に苦情を多数申し立てたことが明らかになりました。

テスラは10月、完全自動運転FSD(Full Self-Driving)ソフトウェアのアップデートにより、自動緊急ブレーキシステムが誤検知されたとしてリコールに追い込まれました。そしてこのリコール後に苦情が急増し、現在も高止まりしていることから、オーナーの不安は続いているようです。

NHTSAに寄せられたオーナーからのファントム・ブレーキに関する苦情は、過去22カ月間で34件に過ぎなかったのに対し、この3カ月間で107件にも上っています。

Credit:THE WASHINGTON POST
https://www.washingtonpost.com/technology/2022/02/02/tesla-phantom-braking/

10月下旬のリコールに加え、テスラが周囲の状況を認識するカメラ群を補完するレーダーセンサーの車両への搭載を中止した時期と、今回のクレームのタイミングが重なっっているのです。テスラは昨年、北米で製造されたテスラ・モデルYとモデル3の車両に、2021年5月からレーダーを装備しないことを発表しています。テスラの新しいアプローチは、「ピュア・ビジョン」として知られています。

テスラ車には8台のサラウンドビューカメラが搭載されており、テスラは「最大250メートルの範囲で車の周囲360度の視界を提供する」としています。また、12個の超音波センサーを活用し、車両周辺の物体を検知しています。テスラは最終的に自社の車両をピュアビジョンに移行したいと考えており、一部のオーナーは自分の車のレーダーセンサーが無効になるのかどうか疑問に思っているようです。

ドライバーや交通安全の専門家は、ソフトウェア変更後にシステムが異常な動作をするようになったと考えていると述べています。

規制当局に苦情を申し立てたテスラ所有者の何人かは、自分の車が反対車線を走るトラックに過剰に反応しているように見えると述べました。あるオーナーは、正午頃、直線道路で大型トラックに反応して、車が時速50マイルから停止寸前まで急ブレーキを掛けた、と説明しています。

「車線の真ん中で止まりそうになるのが怖かった」

カーネギーメロン大学で自律走行車の安全性を研究しているフィル・クープマン教授は、「ファントム・ブレーキは、開発者が、何かがあるときと誤報を判断するための判断基準を適切に設定していない場合に起こるものです」と述べています。

「複数のカメラだけでなく、レーダーやLiDAR(レーザー光線で周囲を点描画する高機能センサー)など、複数の種類のセンサーを使用しています。1種類のセンサーだけでは、異なるタイプのセンサーによるクロスチェックができないため、確実な判断が難しくなります」と彼は言っています。

NHTSAへの苦情は、個別に検証されることはありません。テスラ車オーナーは、問題を報告する際に、問題の内容、車両識別番号、その他の識別情報を提出します。NHTSAの広報担当者ルチア・サンチェス氏は、NHTSAはファントムブレーキの報告についてテスラと対話を行っていると述べています。

「NHTSAは前方衝突回避について寄せられた苦情を認識しており、リスクベースの評価プロセスを通じてレビューしています。このプロセスには、メーカーとの話し合いや、早期警告報告データを含む追加的なデータソースのレビューが含まれます。データの中にリスクが存在する可能性が示された場合、NHTSAは直ちに行動します。」

2020年に広報部門を解散したテスラは、今回もコメントの求めに応じていません。テスラはこれまで、同社の運転支援機能群であるオートパイロットは、衝突データを比較すると一般的な運転よりも安全であると主張してきています。

オートパイロットは主に高速道路での使用を想定したシステムであるため、自動車事故全体とデータを直接比較することはできません。テスラの最高経営責任者イーロン・マスク氏は、オートパイロットを 「明確に安全である」と断言しています。

しかし、同社はリコールや安全性に関する調査など、規制当局からの厳しい追及に直面しており、同社の運転支援アプローチの責任と性能に疑問符が付けられています。

テスラは先月末、完全自動運転ソフトウェアのリコールに踏み切りました。これは、停止線のある交差点を完全に停止せずに通過する「ローリングストップ」を可能にする機能があったためです。テスラは1月にNHTSA当局者と2度にわたって会談し、この問題について議論しており、このことは自動運転に特化したソフトウェアの安全性に関する懸念が高まっていることの一端を表しています。NHTSAは8月、オートパイロット作動中に駐車中の緊急車両と衝突したという約12件の報告を受け、安全調査を開始しました。

テスラのテストドライバーは、すべての人にとって運転をより安全にすることが自分たちの使命だと考えていますが、一方で懐疑論者は、彼らは安全上の危険要素であると主張しています。

ポスト紙の分析は、最新4モデルのテスラ車の1年分以上のデータを対象としています。

2022年型テスラモデル3のオーナーから、外部要因なしに車が突然減速または停止するファントムブレーキと呼ばれる問題について、同モデルに関する全苦情22件のうち20件がこの現象です。

この事象は、通常、前方衝突警告システムおよび自動緊急ブレーキシステムの誤検知によって引き起こされます。また、テスラの運転支援システム「オートパイロット」や「トラフィックアウェア・クルーズコントロール」を使用していることが苦情に多く挙げられています。また、2車線の高速道路で、対向車線を走るトラックによってシステムが作動する問題もよく挙げられています。

テスラ車に関する最近の苦情の大部分は、ファントムブレーキの問題に関連しており、2020年から2022年のテスラモデルYとモデル3、および2019年のテスラモデル3に関する11月以降の苦情189件のうち、57%に相当する107件が、ファントムブレーキの問題でした。

一部のドライバーは、オートパイロットを使用していないときでも、ファントム・ブレーキが発生した事例をがあると主張しています。他のオーナーは、NHTSAへの苦情の中で、要因の無い急ブレーキにより追突されることを恐れたと述べています。

「このような出来事は、私や同乗者はもちろん、後続のドライバーにとっても身の毛もよだつことです。その瞬間にドライバーが注意を払わなければ、悲惨な結果になる可能性さえあります。テスラでこのような重大な安全上の問題が発生するとは思ってもみなかったです。」

また、別のオーナーは長期旅行中に1回または複数回、この現象を経験したと述べています。中には、突然ブレーキが作動したり、車が断続的に揺れる現象によって、ドライブ旅行の楽しい体験が損なわれたと言う人もいました。

「以前のドライブ旅行で、妊娠中のお腹に大きな圧力がかかるような、不当で攻撃的な自動ブレーキを経験したので、妻が車に乗っている間はクルーズコントロールやオートパイロットを使わないよう注意しています」

「これらの現象は、私の車の前に何もない状態で、時には私の周りに何もない状態で起こっている」

2022年式のテスラモデルYに乗るルイス・フェルナンデスさんは、最近サンフランシスコのテイラー通りとパイン通りにいたところ、彼の車が数フィート前にビニール袋を見つけたと言います。その袋は危険なものではなく、すぐに視界から消えたとのことです。しかし、彼が介入する前に、車は時速25マイルから時速15マイルに急激なブレーキをかけました。

「突然、車がロックされたような状態になりましたが、ビニール袋が離れたのですぐに解放されました。. . . 車は完全に予防線を張っていたんです。」

2021年型テスラモデルYのオーナー、ベン・モリスさんは、彼がNHTSAに苦情を申し立てた一人で、彼は、これが3台目のテスラで、他のモデル以上にこの問題が現れたと語っっています。

「私達は主に2車線の高速道路で車を運転し、そこで問題が一貫して現れるのです。私の2017年モデルXは以前にもファントムブレーキ現象が起きたことがありますが、それは非常に稀なことでした。しかしながら、2021年5月にリリースされたビジョンベースのシステムでは毎日この危ない挙動を目にしています。」

彼は、妻が時速55~60マイルの高速道路を運転しているときに、「クルマが突然激しくブレーキを踏み、私たちの子供のチャイルドシートがフロントシートに叩きつけられた」事例を思い出しました。

幸運なことに、子供たちは車に乗っていなかったとのことです。

この記事はこのサイトを引用・翻訳・追加・編集・改変して作成しています。

ワシントン・ポストのオーナーはAmazon創業者なのですがね。

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