テスラが積極的な値下げ戦略とキャンペーンで顧客を誘い続ける中、トヨタはハイブリッドが絶好調でEV需要の減退を楽しんでいるようです。
テスラの2024年第1四半期の販売台数が期待外れだったため、誰もがテスラを貶め続けている一方で、株式市場はトヨタをさらに支持しています。イーロン・マスクCEOは、ギガファクトリー・ベルリンでの放火事件、紅海での海運危機、カリフォルニアでの新型モデル3の生産立ち上げが原因だとしています。しかし、EV競争における後発組であるトヨタが、その緩慢なアプローチから逆に報われつつあるようです。
今回は、電気自動車競争の「減速」というシナリオからトヨタがいかに利益を得ているかについてご紹介します。
トヨタはEVの価格競争が大好き
トヨタは環境・気候擁護派の怒りを買い、EVの緊急性に断固反対するロビー活動を展開してきました。その結果、米国環境保護庁(EPA)が、EVへの移行をより緩やかなものにするよう求める、有利な排ガス政策を打ち出しました。そして、その間に世界中で繰り広げられた残酷なEV価格競争が様々な状況の変化をもたらしています。
正直なところ、トヨタはこれ以上有利なシナリオを描くことはできませんでした。トヨタは今年の第1四半期で販売台数を大きく伸ばし、ハイブリッド車とPHEVの台数は、今年最初の3カ月間で過去最高の販売台数を記録しています。トヨタの株価は年初から32%上昇したのに対し、逆にテスラの株価は33%も下落しています。
もちろん、両者を直接比較するのは不公平です。テスラはバッテリー・エレクトリック車(BEV)のみを販売するいわば「異業種」であるのに対し、トヨタはガソリンを大量に消費するランドクルーザーから、プラグイン・ハイブリッドのプリウス・プライム、これまでは精彩を欠く電気クロスオーバーbZ4xまで、あらゆるものを提供しています。
しかし、多くの専門家は、ここアメリカのEV産業は、第1波と第2波のアーリーアダプターが購入する時期を過ぎたと考えています。EV購入者の次の波は、3万ドル以下の手頃な価格のEVを求めており、彼らは充電や航続距離の心配をしたくないのです。トヨタのハイブリッド車が評価されているのはまさにそこです。
直近のマーケット分析会社チップランクスの確かな見解は以下です。
「当然ながら、価格競争がトヨタ株にとって有益な理由は主に2つあります。第一に、どのような価格競争も需要不足が原因です。特に、EV市場のリーダーであるテスラが激しい競争を仕掛けている場合は、パワーがあります。名を上げようとする新興企業であれば、それは理解できます。
本来テスラには社会的な信用があるので、そのような値下げ戦術を取る必要はないはずなのです。ということは、EV市場全体に深刻な問題があるのでしょう。
第二に、価格競争は理論的にはテスラが競争相手を淘汰するのに役立つはずです。しかし一方で、それはトヨタの助けにもなるでしょう。トヨタが電動化を導入する準備が整えば、トヨタは競争相手を減らすことができます。一方、積極的な低価格設定はトヨタの主力ライバルに大打撃を与えることになるのです。」
漁夫の利を得るトヨタ
自動車メーカー各社が手頃な価格のEVを急いで製造し、中国自動車メーカーが抵抗できないほど安いEVで米国市場に参入しようとするのを阻止する一方で、トヨタは得意なことを続ければいいのです。それは、従来のハイブリッド車やPHEV、ガソリンエンジンモデルを販売する一方で、2026年までに新たに10種類の純粋な電気自動車を市場に投入するために水面下で努力することです。
これはトヨタ対テスラという構図ではなく、複雑化するEV市場の中でのトヨタという構図です。環境擁護派は、ハイブリッド車をより効率的なガソリン車と決めつけていますが、これは技術を単純化しすぎていると私は思います。しかし、ハイブリッド車によって電気推進に慣れ親しむことができ、うまくいけばより良い教育につながるため、暫定的には消費者にとって良いことかもしれません。
とはいえ、トヨタは完全な脱炭素化という最終目標から手を引いているわけではありません。最近のトヨタは、ライバルに「追いつく」ことに全力を注いでいると述べています。遅れているトヨタが、真の勝者になる可能性までもあるのです。
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