ロイター通信は、テスラがおよそ10年前にEVの航続距離を誇張し始めたと主張する複数の情報源を引用しています。
クレーム封じの極秘チーム
テスラは昨年夏、顧客から寄せられた数千件の航続距離に関する苦情を封じ込める目的で「極秘チーム」を結成したという疑惑に直面しています。
この問題に詳しい複数の情報筋の話を引用したロイター通信の報道によると、この疑惑の「極秘チーム」の一員であるテスラの従業員は、航続距離が短いと不満を持つ顧客がEVを修理に持ち込むのを妨害するよう指示されていたとのことです。
複数の情報筋によると、同社はラスベガスに「極秘チーム」を密かに設置し、航続距離に関連するサービス予約をできる限りキャンセルするように仕向けていたとのことです。テスラは、サービスセンターに顧客からのサービス予約が殺到したため、このような措置をとったようです。
これらのテスラオーナーのほとんどは、同社が宣伝している航続距離の予測値や、車のスクリーンに表示される航続距離の予測値に基づいて、長い航続距離を期待していました。これに対して何千人もの顧客が、診断すらしていないテスラのサービスアドバイザーから「あなたの車には何の問題もない」と言われたと証言しています。
テスラのマネージャーは、「極秘チーム」の従業員に対し、予約をキャンセルするたびに約1,000ドルを節約していると話したと報告書に記載されています。また、予約待ち時間が長いサービスセンターへのプレッシャーを軽減しているとも記載されています。
この「極秘チーム」のオフィスでは、机の上に立って同僚たちから拍手喝采を浴びて、サービス予約のキャンセルを祝う従業員もいました。このチームは週に何百件もの「航続距離クレーム」ケースを解決することが多く、従業員は1日あたりの平均予約回避件数をフォローされていたとのことです。
伝統的な航続距離の誇張
情報筋の1人によると、テスラは最近、米国ネバダ州で「極秘チーム」を利用して航続距離関連の苦情を処理するのをやめ、ユタ州のオフィスにあるバーチャルサービスアドバイザーとの対応に置き換えたとのことです。
さらに驚くべきは、ほとんどの場合、車は修理の必要すらなかった可能性が高いという事実です。というのも、顧客からのクレームは、テスラが車の航続距離に関して所有者に誤解を与えたことに起因しているからです。
テスラはEVの航続距離を誇張し、実際の航続距離以上に消費者の期待を高めていると非難されています。テスラのEVをテストまたは研究した3人の自動車専門家へのロイター通信のインタビューによると、テスラのEVはしばしば、宣伝されている航続可能距離の見積もりや、テスラ自身の予測をも達成できないことがあるとのことです。
どうやらこの航続距離の誇張は、テスラが2ドアのロードスターとモデルSの2台しか販売していなかった10年ほど前に、マーケティング目的で始まった慣習のようです。
テスラは、1回の充電で走行可能な距離について楽観的な予測を表示する航続距離計のアルゴリズムを作成することで、航続距離予測ソフトウェアを不正に操作していたとされています。その後、バッテリーが最大充電量の50%以下になると、アルゴリズムはドライバーにより現実的な走行可能距離の予測を表示する、とこの人物は証言しています。予測された航続距離が急速に減少し始め、ドライバーが立ち往生するのを防ぐため、テスラは予備のバッテリー容量である「セーフティ・バッファ」を備えた設計になっており、スクリーン上の表示でバッテリーが空になった後でも、15マイル(約24キロ)程度の航続距離を追加できるようになっている、とこの関係者は述べています。
同じ情報筋によると、楽観的な航続可能距離の見積もりを顧客に示すよう指示したのは、テスラのイーロン・マスク氏で、同氏は「フル充電時の航続可能距離の数字を良く見せたかった」のだと述べています。
スクリーン上の航続距離予測を意図的に膨らませたという疑惑も、航続距離に関する苦情を処理するチームを作ったという疑惑も、これまで報道されたことはありません。これらは重大な疑惑であるため、ロイター通信はテスラとイーロン・マスク氏の双方にこの問題についての詳細な質問をしましたが、どちらも回答は無かったとのことです。
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