米国では、テスラは自動車の自立運転を可能にするFSD(Full Self-Driving:完全自動運転)ソフトウェアを搭載した車を問題なく販売しています。ドイツでは、FSDについてテスラは「自律走行の可能性を最大限に引き出す」と呼んでいるようです。現在は7,500ユーロ(現在の為替レートで約100万円)ですが、かつては6,300ユーロ(同約84万円)だったそうです。今回、不幸なドイツの顧客が、そのソフトに関してにテスラを訴えることにしました。
この男性は、FSDソフトウェアが有効なときに自分の車が「酔っ払った初心者ドライバーのように」運転することに気づき、お金を取り戻すために同社を訴えることにしたのです。彼はまた、自分のモデル3のハードウェアがADAS(先進運転支援システム)と互換性がないと主張しました。
ドイツ・シュピーゲル誌はこの件を取り上げましたが、この顧客のテスラがFSDソフトウェアで期待通りに動作しなかった理由については詳述していません。私たちの推定では、彼はHW3.0(ハードウェア3.0)ではなくHW 2.5のモデル3を受け取ったのだと思います。
イーロン・マスクCEOは2019年4月22日、その日から製造されるすべてのテスラに、自律走行実現に必要な演算能力を持つ新しいコンピューター、HW3.0を搭載すると公約したのです。それまでのEVには、2016年10月19日にテスラが約束した、すべてのクルマを「ロボタクシー」にすることが可能なコンピューターHW 2.5が搭載されていました。
問題は、複数の顧客がHW2.5搭載車を受け取り続けていたことです。中国では、顧客がそのことを消費者保護当局に訴え、テスラは新しいクルマの古いコンピュータをすべて交換するよう命じられました。カナダでは、イーロン・マスクCEOが言ったHW3.0のユニットを渡すよう、テスラを訴えようとしている人たちもいました。
これらに対応するためのテスラの言い訳は、FSDにお金を払ってくれた人には、ソフトウェアの準備ができ次第、無料でコンピュータを交換する、というものでした。このFSDソフトウェアが完成することはなく、ベータ版ソフトウェアとして発表され続けていることを考えると、テスラはその約束を守ることを事実上免除されていることになります。
このドイツの顧客にとって幸運だったのは、このテスラの対応が彼の国では適用されないということです。
ダルムシュタットの地方裁判所は、このテスラの顧客から、彼の車が高速道路で遅い車を追い越すことができないことを聞きました。また、信号や一時停止の標識も認識できませんでした。このドイツの顧客は、「酔っ払った初心者ドライバー」のような状態なので、自分のクルマが「自律走行の可能性を最大限に引き出す」ものであることに異議を唱えたのです。
テスラは、ADASは「仕様の範囲内」であり、現在ドイツで適用されている自律走行に関する規制に従って動作していると述べ、これらの申し立てに対して防御しようとしました。しかし、ダルムシュタットの裁判所はそれを認めませんでした。
アメリカのEVメーカーは、この顧客に6,300ユーロを返しただけでなく、有罪判決を受けたのです。ドイツの裁判官はテスラに対し、6万9000ユーロ(約929万円)もするモデル3の買い戻しを命じたのです。
今回原告側の弁護士、クリストフ・リンドナー氏は、これはテスラが約束を「法的に保証」するための重要な判例になると述べました。
テスラはこの判決を不服として控訴しました。
この記事はこのサイトを引用・翻訳・抜粋・編集して作成しています。
「自律走行の可能性を最大限に引き出す」という表現であればOKな気がしますが、FSD(Full Self-Driving:完全自動運転)という用語は誤解を招きますね。
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