なぜ大手自動車メーカーはテスラに追いつかないのか?

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テスラが登場する以前は、新興企業が巨大な自動車メーカーに挑戦することは事実上不可能であるというのが、これまでの常識でした。経済学の教授が参入障壁の概念を説明するとき、通常は自動車産業がその例として挙げられたものです。自動車を大量に販売するには、膨大な産業資源だけでなく、非常に複雑なサプライチェーンとディーラーネットワークが必要であり、新興企業が太刀打ちできるはずがなかったからです。

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しかし、自動車産業におけるソフトウェアやテクノロジーの重要性が増していることを考えると、このモデルは有効ではなかった、あるいは、もはや有効ではなかったと言ったほうが正確かもしれません。今にして思えば、テスラは適切な時期に適切な場所に、適切なアイデアで存在していたのです。リチウムイオンバッテリーの技術が進歩し、高性能の電気自動車が実現可能になったこと、テスラチームが賢明にも、ガソリン車ではなく、電気自動車を作ることを選んだこと、そしておそらく最も重要なことは、同社が素晴らしい才能といくつかの大きな幸運に恵まれたことでしょう。

しかし、もうひとつ、自動車業界関係者が頭を悩ませる難問があります。テスラがその可能性を示した後、なぜ大手自動車メーカーはEV市場にすぐさま参入し、テスラを葬り去らなかったのでしょうか?テスラの中ですら、数年以内にそうなると予想していた人がいたにもかかわらず、です。

しかし、それから20年。既存自動車メーカーが、この颯爽とした新興企業に本気で挑み始めたのは、ようやく今になってからです。フォードのマスタング・マッハEは最近、テスラのモデル3を退け、コンシューマー・レポートのEVトップ・ピックに選ばれました。これは、少なくとも旧来の自動車メーカーの1社がそれに気づき、EVの分野でようやく競争が始まる兆しということができます(ただし、ほとんどの人が、旧来のブランドは「追いつく」ために長い道のりを歩んでいると考えているようです)。

なぜ恐竜は、足元をうろつく毛皮を着た哺乳類に気づくのに時間がかかったのでしょうか?この重要な問いに誰かが納得のいく答えを出すことはできるのでしょうか?

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私たちは、何度かこの試みに挑戦してきました。大手自動車メーカーがテスラを捉えられなかったことを、有名な「イノベーションのジレンマ」(訳注:既存顧客のニーズを満たすために自社の製品やサービスの進歩に注力した結果、顧客が抱く別の需要に気付けず、異質の技術革新によって登場した新興企業に敗北する現象)という言葉で説明したこともあります。

そして今回は、物理学の世界からのアナロジーでご紹介します。

  • 力=質量×加速度

この仕組みを理解するために、屋根から雨水が落ちる様子を考えてみましょう。軒先から直接水が落ちると、あっという間に地面に穴が開き、花壇が台無しになります。この問題を解決するには、雨どいや樋を設置することで、雨水の通り道を変えることができます。屋根から落ちる水の質量は同じですが、雨どいや樋を通るときに摩擦で速度が落ちるので、地面にぶつかる力はずっと弱くなり、無害に流れ去ります。

物理学と自動車産業とのあいだにどんな関係があるのでしょうか?

「力」はEVのマーケットシェア、「質量」は利用できるリソース(資本、生産能力、マーケティング)の量、「加速度」は自動車メーカーがEVを開発するスピードを表していると考えてみることができます。

もちろん、巨大な既存自動車メーカーは、電動化という問題に対して、より大きな力を発揮することができますが、テスラは一貫して、より大きな「加速度」を実現しているのです。

はっきり言って、実用的なEVを作るという技術的な挑戦は、決してそれほど難しい問題ではありませんでした。GMのEV1はモデルSではなかったですが、商業的に成功する製品につながる反復プロセスの良い最初のステップとなり得る実用的な車ではありました。しかし、GMはこのプログラムを中止することを選択し、その後10年間はEVに取り組まなかったのです。

他の既存自動車メーカーも、さまざまな問題にぶち当たっています。現在では、ほぼすべてのメーカーが少なくとも1台のEVを市場に投入しており、その中には優れた車もあります。これらの企業が、常に豊富にある資本と技術的な専門知識をこの課題に注いでいれば、もっともっと早く実現できたはずで、足りないのは技術力ではなく、やる気とスピードなのです。

物理公式に例えるなら、既存自動車メーカーは常に「質量」は十分だが、「加速度」はほとんどない状態です。GMのような企業では、電動自動車プログラムは、非常にゆっくりとしか進みませんでした。一方、テスラのマスタープランは、そのスピードにおいて他社を圧倒していました。

自動車に例えるなら、旧来の企業は、ドライバーがアクセルから足を離して路肩を這うように走る巨大なハマーのようなもので、テスラはペダルを踏み込んで追い越し車線を走る小さなロードスターのようなものです。

先進的な自動車メーカーが、いずれテスラのEV市場シェアを奪うことはそれほど難しくは無いです。ただ、それを実現するためにはアクセルを(かなり強く)踏み込む必要があるのです。少なくともいくつかの既存自動車メーカーは、その準備を始めているようです。

VW、GM、ダイムラー、現代自動車などは、工場をEV生産に転換し、サプライチェーンを確保し、充電インフラを構築し、かつての技術からリソースをどんどんシフトしています。

私たちはテスラの車を愛していますし、何が起ころうとも、テスラにはある種の神秘性があることに間違いはありません。しかし、1社がEV市場を独占し続けることは、環境にとっても、自動車産業にとっても、消費者にとっても健全なことではありません。今こそ、世界の自動車メーカーが鉄槌を下すべき時なのです。

この記事はこのサイトを引用・翻訳・編集して作成しています。

確かに、テスラのスピードは常識を大きく超えてます。

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