ヨーロッパに拠点を置く自動車メーカー、ステランティス(旧フィアット・クライスラー・オートモービルズ)は、自らの置かれている立場を理解しています。
ジープ、ダッジ、プジョー、フィアット、アルファロメオなどのブランドを擁するこの大手自動車メーカー・ステランティスグループは、今や自動車の世界で当たり前のように行われているEV化について大きな計画を発表しましたが、すでに、GM、フォード、フォルクスワーゲンといった競合他社に遅れをとっているのです。
ステランティスは、そろそろ追いつくべきと判断し、今週初めに開催された戦略デーで「Dare Forward 2030」計画を明らかにしました。同社が2030年までに実現したいこととしては、次のようなものがあげられています。
- グローバルBEV(バッテリー電気自動車)販売台数500万台、欧州で乗用車BEV販売台数の100%、米国で乗用車と小型トラックの50%を達成。
- 2023年初頭に発売するジープブランド初の100%バッテリー電動SUV、2023年後半のラム・プロマスターBEV、2024年のラム1500BEVピックアップトラックなど、75台のBEVを導入。
- グローバルな売上を3,000億ユーロ(約37兆3500億円)に倍増
- 炭素排出量を50%削減(2038年までにカーボン・ネットゼロを実現)
これらの目標は、基本的に他のグローバルな自動車メーカーの競合他社が計画している路線と一致しています。2021年7月に行われた同社のEV関連イベント「EVデイ」で、同社は2025年末までに約300億ユーロ(約4兆円)を投じてEVを拡充すると発表しました。ただしステラティスは、「Dare Forward 2030」構想を完成させるための新たな追加資金については明らかにしませんでした。
フォードのような競合他社が今週、積極的にビジネスモデルを変更し、ICE(内燃機関)事業とEV事業を分離し(そして、2026年までのEV支出を300億ドルから500億ドルへと驚異的に押し上げた)ことから、ステランティスがEV分野で競争力を発揮するのに十分かどうかはいまだに疑問のままとなっています。
今週、ステランティスのカルロス・タバレスCEOとある会合で話をする機会を得ました。
2つの大きな柱
多くのメーカーがEVへの変革に取り組んでいますが、タバレスCEOは、変化の鍵は電動化とソフトウェアという「2つの大きな柱」だと言っています。これは既存の自動車メーカーにとって非常に新しい分野なのですが、競争に勝つためには投資しなければならない分野といううことです。
しかし、タバレスCEOは現実主義者であり、既存のICE(内燃機関)事業の価値を否定するものではありません。
「電動化のための投資を、ICE事業から得られる資金で賄っているのは、まったくもって事実です。それこそが、私たちが望むことであり、だからこそ300億ユーロを投資することができるのです。」
自動車メーカーは賢くなければなりません。変化をもたらすためには、自動車メーカーだけでなく、世界中の中間層の自動車購入者が支払うコストに目を向けなければならないからだ、とタバレスCEOは言っています。
つまりこれが意味するのは、既存の古く、汚い車を、内燃機関エンジンを使っていたとしても、汚染物質の排出量が半分以下で、コストもEVよりはるかに安い新型車に置き換えるということです。
この点での「妥協」が、タバレスCEOの立場です。もう一つの立場は、化石燃料を完全に禁止することですが、タバレスCEOはまだ受け入れる準備ができていないようです。
「社会にとって何がベストな取引なのかを考えるのではなく、教条主義が先行してしまっているのです。EVの販売台数は、EVに高いお金を払える人たちの世帯収入に大きく左右されます。地球温暖化問題は、一人当たりの世帯収入によって制限されます。このEV化戦略を、ポンコツ車を道路から排除し、電化率が低くても、手頃な価格の最新車に置き換える戦略で補完しなければ、何かが足りなくなります。」
フォードの大博打
フォードとジム・ファーリーCEOは、EVとそれ以外のICE事業のような2つのユニットに事業を分割するという大博打を打つようですが、タバレスCEOは、これは純粋にフォードの変革のための動きではないと見て、皮肉を隠しませんでした。
「フォードの動きは、市場から非常に好意的に受け止められています。非常によくやった、と。既存自動車メーカーは、前世紀の間、富を生み出してきました。それが突然、レガシーであることがペナルティになり、他のEV化をすすめるメーカーよりも制約が多くなるのなら、それでいいじゃないか。しかし、私たちが活動する社会は、自動車産業があまりにも速く変化し、もし社会に何らかの影響があれば、それは変化する必要があるからだ、という事実を受け入れる必要があります。」
ここでいう「変化」とは、EVの未来に適応するための設備や知識を持たないサプライヤー、ディーラーネットワーク、さらにはサービスプロバイダーなどに起こることを指します。
要するに、タバレスCEOは、政府やNGOは自動車メーカーが電動化に直ちに移行することを望んでいるが、電動化の現実が到来したときに「混乱を引き起こす」ことは望んでいないということです。
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どこかに同じような主張をしている社長がいましたね。
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