テスラの公式Xアカウントで、横浜の街を走り抜けるFSD(監視型)の動画を公開しました。
EVから自動運転、ロボタクシーへ
以前の予想とは大きく違って、最近のテスラ車の販売台数は予想を大きく裏切る不調に入っています。7月初旬に発表された2025年第2四半期の販売台数も、その前の四半期の販売台数も2024年の水準を大きく下回る水準で、テスラ車の販売は今年に入って低迷を続けています。
これには、テスラ車とかEVとか関係なしに、イーロン・マスクCEOの政治的発言や、肩入れするトランプ政権への反発等もありますし、実際に欧州ではテスラ車の販売は大きく落ち込む一方で、他自動車メーカーのEVは昨年に比較して大きく販売台数を伸ばしていることからも、世界の趨勢は電動化へ進んでいるものと考えられます。
ところが実のところ、テスラ社(つまりイーロン・マスクCEO)の目指すところはEVの販売台数拡大から、今や自動運転、ロボタクシーの実現というところまで進んでいます。そうした状況の中で、今回テスラ日本の公式Xアカウントおよび(広報部門が無いからか)PR Timesで公式にFSDソフトウェアが日本国内で動く様子が公開されました。
レベル2運転支援FSDの実力
テスラは自動運転のソフトウェアのことをFSD(supervised)(Full Self-Driving:監視付き)と表現しています。これはFSD(直訳すると完全自動運転)という用語が消費者の誤解を招くということで、米国本国や欧州で訴訟まで発展するような事態になり、あくまで自動運転レベル2の運転支援システムということを強調するためわざわざ「(運転者による)監視付き」とまで表現する事態になっています。
自動運転のレベルは以下の表のように5段階に分けられていて、テスラが提供しているFSD(supervised)は下から2番目のレベル2なので、運転の責任も運転者に100%あるという運転支援システム(ADAS)に位置付けられます。
| 概要 | 運転(責任)の主体 | |
| レベル0 運転自動化なし |
ドライバーが全ての運転操作を行う | ドライバー |
| レベル1 運転支援 |
システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを部分的に行う | ドライバー |
| レベル2 部分運転自動化 |
システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に行う | ドライバー |
| レベル3 条件付運転自動化 |
決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。ただし運転自動化システム作動中も、システムからの要請でドライバーはいつでも運転に戻れなければならない。 | システム (非作動の場合はドライバー) |
| レベル4 高度運転自動化 |
決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。 | システム (非作動の場合はドライバー) |
| レベル5 完全運転自動化 |
条件なく、全ての運転操作を自動化。 | システム |
そして、日産プロパイロットをはじめとする他社の運転支援技術も概ねこのレベル2運転支援システムに位置付けられるので、今回公開されたテスラのFSDもそれらと同列に扱われて、レベル2の運転支援システムとして位置付けられています。
ただ、今回公開された映像を一度見てもらうと分かるように、日本の普通の市街地を(監視付きですが運転者の介入は一切なしに)自動運転で走り抜ける様子は、他の自動車メーカーが提供している運転支援システムとは比較にならない驚異的な性能なのです。
FSD (Supervised)のテスト走行を本格開始
— Tesla Japan (@teslajapan) August 20, 2025
*国内リリース時期は、弊社開発状況及び規制当局の許認可に依存します。 pic.twitter.com/0DmacEkTXq
自動運転からロボタクシーへ
テスラの自動運転には他社にはない大きな2つの特徴があります。それはエンド・ツー・エンド(E to E)といわれるAIのアプローチと、レーダーやLiDARといったセンサー類を排除し、カメラ映像(とマイク)からの情報だけで自動運転を実現するテスラビジョン方式というアプローチです。
この発想はかつてイーロン・マスクCEOが、人間の運転手は二つの目で自律的に運転できるのだから、8つもカメラがあれば人間の運転より上手に安全に自動運転が実現できるはず、予測に基づくものです。
エンド・ツー・エンド(E to E)
イーロン・マスクCEOは2016年頃から、自動運転の実現は「まもなく」と毎年のように公言してきました。もちろん、いまだにレベル2の運転支援システムなので、自動運転は米国においても実現していません。
ただ、その性能に飛躍的な進歩を遂げたのが、FSDがバージョン12になった時です。それ以前は、10万行にわたるとされるプログラムのコードベースで制御がなされており、赤信号では止まるとか停止線では一旦停止とかコードで制御されていました。これがバージョン12以降では主にカメラ映像の情報入力からハンドルやアクセルなど操作出力までAIを使ってエンド・ツー・エンドで実現するアプローチに変えた事で自動運転性能の大きな飛躍がありました。
テスラ車はこれまで世界で累計700万台以上売れています。そのテスラ車付属の8台のカメラ映像から毎日大量にデータを吸い上げて、Nvidiaのチップを使って自社で構築したスーパーコンピュータクラスター(Cortex)で深層学習させることで、このFSDソフトウェアを構築しています。この時点で、他の自動車メーカーは追いつけないレベルに到達していることが容易に想像できます。
自社でスーパーコンピュータクラスターを構築することはもとより、AIの学習に必須とされるエッジケースを含む膨大なデータを持っているのは世界でテスラ社だけなのです。
テスラビジョンとロボタクシー
自動運転の先にはロボタクシーが待っています。車を運転するのはモノを運んだり、移動するための手段なので、それが無人で自動で実現できればその世界的な需要は計り知れないものになります。自動運転実現のアプローチでテスラに特徴的なのは、通常使うレーダーやLiDARといった高価なセンサー類を一切使わずカメラ映像(目)とマイク(耳)だけで自動運転を実現しようとしているところです。
ロボタクシーで先行しているとされているグーグルのウェイモは2016年から事業開始し、米国の5つの都市で展開していますが、現在走っているウェイモ車は合計1000台程度といわれています。これは、ウェイモはたくさんのセンサーやLiDAR、運転エリアの高精細マップデータなどが必要で、その規模拡大に手間とコストと時間がかかることがその大きな要因です。
一方で、テスラは今年6月から米国テキサス州オースティンでロボタクシーの試験サービスを開始しています。特に驚きなのは、このロボタクシー車両は一般ユーザーに提供されている新型モデルYと同じものということです。つまり、市販車両がソフトウェアの入れ替えだけでロボタクシーになるという事で、イーロン・マスクCEOはかねてから、自家用車は9割の時間自宅の駐車場にあるだけなので、その間テスラ車であれば無人ロボタクシーとなって勝手に稼ぐことが可能、とまで言っています。
イーロン・マスクCEOは6月に10台でテキサス州で試験運用始めたロボタクシーが今年の年末には米国の人口の半分を対象にしたエリアにまで拡大するといっているのは、こうしたテスラ車に特有のスケールアップの容易さになるのです。
自動運転で納車
テスラは6月末に、新型モデルY製造工場であるギガファクトリー・テキサスからユーザーの自宅まで、高速道路を使って最高速度115km/hを出して完全無人運転で自動納車する様子をビデオで公開しています。
ロボタクシーのように人を乗せると様々な安全措置や規制などでこうしたことは難しいのですが、人を乗せない完全無人の場合には規制が緩和され可能になるのです。
ただ、この驚き出来事もあまりニュースにはなってませんでしたが…。
日本での実現はいつ頃?
今回のようなテスラ公式からのFSD映像の公開は、実はオランダ、ドイツ、スペイン、英国、フランスなど欧州でも、更に直近では同じ右ハンドル市場であるオーストラリア、ニュージーランドでも公開されています。
また、普通に考えると日本の場合(実際のところよくわかりませんが)自動運転に限らず他にもたくさんテスラのソフトウェアに制限が掛かっていますので、このFSDの実現も遠い先と考えておくのが通常でしょう。
ただ、一縷の望みがあるとすると「トランプ外圧」による早期実現化だと考えられます。相互関税の緩和条件の一つに米国基準を満たした米国車(テスラ車含む)を無条件に日本市場に受け入れるということも言われています。ソフトウェアの制限も米国車の日本への輸出の参入障壁という扱いになれば、案外はやくテスラのFSDが日本の一般ユーザーに開放されるかもしれません。
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