テスラが展開を進めているソフトウェアアップデート「2026.38」のファームウェアに関して、旧型オーナーにとって見逃せない動きが報じられました。
これまでAMD Ryzen搭載車両の専用機能だった対話型AI「Grok(グロック)」のサポートファイルが、Intel Atomプロセッサを搭載したモデル3/モデルY向けのビルドにも新たに追加されていたことが判明しました(Not a Tesla App報道)。
Intel搭載のモデル3(Model 3)/モデルY(Model Y)に乗るオーナーにとって、果たして車載Grokは実際に機能開放されるのか。なお、同じIntel世代でもモデルS/Xにはサポートファイルが存在しません。プロセッサ処理能力の格差とクラウド連携アーキテクチャから技術的背景を解明します。
アップデート2026.38で判明した事実
Not a Tesla Appの報道(2026年10月31日)によると、判明している事実は以下の通りです。
- root権限を持つオーナーが、Intel Atom搭載のモデル3でフィーチャーフラグを切り替えるだけでGrokを動作させた動画が公開された
- Teslaハッカーの@greentheonly氏が、2026.38でIntel搭載のモデル3/モデルY向けビルドにGrokのサポートファイルが追加されたと確認した
- 同じIntel CPUでも旧型モデルS/Xには、Grokのサポートファイルが存在しない
これまでテスラは、対話型AI Grokの車載統合について、AMD Ryzen搭載車を前提として提供してきました。今回のビルド追加は、Intel Atom搭載のモデル3/モデルYにもGrokを届ける土台となる可能性があります。ただしテスラは公式には何も発表していません。
Intel Atom(MCU2)とAMD Ryzen(MCU3)の処理能力差
テスラの車載コンピューターは、2021年から2022年初頭にかけてIntel AtomからAMD Ryzenへ世代交代が行われました(時期は車種により異なります)。
| 項目 | Intel Atom(MCU2) | AMD Ryzen(MCU3) |
|---|---|---|
| 採用時期 | 〜2021年頃(車種により異なる) | 2021年後半〜2022年初頭以降(車種により異なる) |
| CPUコア | 4コア(低消費電力Atom) | 4コア/8スレッド |
| グラフィックス性能 | 内蔵グラフィックス(Ryzenより大幅に低い性能) | RDNA 2アーキテクチャ(Atomより大幅に高い性能) |
| 主な非対応機能 | フルスクリーン駐車ビジュアライゼーション、Grok(現時点) | 全インフォテインメント機能に対応 |
Intel Atom搭載車は、フルスクリーンの駐車ビジュアライゼーションなどグラフィック負荷の高い機能から除外されてきました。Grokも発表当初からRyzen搭載車に限定されており、旧型車には提供されないと諦めていたオーナーは少なくありません。
なぜ「Grok」なら旧型プロセッサでも動作可能なのか?
車載タッチスクリーン上で最新の対話型AIを動かすと聞くと、車載コンピューターに極めて高い計算能力が求められるように思われます。しかし、自動運転(FSD)のニューラルネットワークとは異なり、Grokの処理パイプラインは根本的に構造が異なります。
1. 車載推論ではなく「クラウド推論」である点
Grokは主にクラウド上で動作します。そのためIntelチップでも処理できる可能性があるとNot a Tesla Appは指摘しています。
2. 車両側の負担は比較的小さいと考えられる
重い処理をクラウドが担うため、車両側の負荷は小さいと考えられます。実際にIntel Atom搭載のモデル3で、フラグを切り替えるだけでGrokが動作した例が報告されています。
3. プレミアムコネクティビティとの連携
クラウドとの常時大容量通信が必要となるため、セルラー通信を利用する場合は月額1,990円(税込)のプレミアムコネクティビティ契約、またはスマートフォンのWi-Fiテザリング環境が必須要件となります。
旧型テスラ車でGrokが利用可能になるための3つの条件
ファームウェア内にバイナリが追加されたとはいえ、即座にすべてのIntel搭載車でGrokが起動するわけではありません。実際に画面上でアイコンをタップして会話できるようになるには、以下のハードルを越える必要があります。
1. テスラによる公式有効化と日本への配信
2026.38は9月下旬から配信が始まっていますが、現時点でテスラはIntel車向けのGrokを公式発表していません。公式に有効化され、日本向けにも配信される必要があります。
2. サーバー側機能フラグ(Feature Flag)の有効化
テスラは新機能の提供開始をクラウド側の設定フラグで細かくコントロールしています。バイナリが車内にインストールされていても、テスラ側が「Intel搭載車両に対するGrokアクセス権」をサーバー側でオンにするまではUI上に表示されません。
3. 日本向けの展開有無
GrokはすでにRyzen搭載車向けに多くの市場で提供されており、論点はIntel搭載車への有効化の可否です。日本でも展開されるかは、今後のテスラの発表次第です。
愛車のプロセッサ(IntelかRyzenか)を確認する手順
自身のテスラがIntel Atom搭載車なのか、AMD Ryzen搭載車なのかは、車内のタッチスクリーンから数秒で確認できます。
1. 設定メニューを開く
車載画面左下の「車両アイコン(コントロール)」をタップします。
2. ソフトウェア情報を選択
メニュー一覧から「ソフトウェア」を選択し、画面中央付近にある青文字の「追加の車両情報」をタップします。
3. インフォテインメント プロセッサの項目を確認
ポップアップウィンドウ内の「インフォテインメント プロセッサ」の欄を確認します。
- 「Intel Atom」と表示されていればMCU2
- 「AMD Ryzen」と表示されていればMCU3
特に2021年後半から2022年初頭にかけて納車された車両は切り替え時期にあたるため、確認しておくことをおすすめします。
テスラは旧型ハードウェアを救済するのか
HW3車両向けの「FSD V14 Lite」の提供方針が示されていることとあわせ、今回のIntel車向けGrokファイルの追加は、既存オーナーの車両価値を維持しようとする動きの兆しとも読めます。ただしテスラは未発表で、駐車ビジュアライゼーションのように資産だけが長年有効化されない前例もあります。ホリデーアップデートでの有効化の可能性が指摘されている段階であり、続報を待つ必要があります。
ハードウェアの世代交代によって新車へ乗り換えを促す旧来の自動車ビジネスとは異なり、クラウド連携とOTAアップデートによって何年も前の車が最新の対話型AIパートナーへと進化する。もし実現すれば、ソフトウェア定義車両(SDV)の強みを示す事例となります。
参考情報
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