テスラはイーロン・マスク氏なしで生き残れるでしょうか?

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電気自動車のパイオニアは現在、多くの面で逆風に直面しています。その中でも特に重要なのは、同社のCEOの行動です。

  • テスラはCEOイーロン・マスク氏の政治活動や過激な行動がブランドに与える影響で、販売低迷や競争激化に直面しています。
  • サイバートラックの販売不振や製品の陳腐化、競合他社の台頭により、テスラは市場での優位性を失いつつあります。
  • 専門家はテスラがマスク氏なしでも生存可能と見ていますが、ブランドの回復には大きな課題が残っています。

私は15年以上にわたり電気自動車に注目してきており、多くの浮き沈みを目の当たりにしてきました。しかし、ここ数週間の間に私のフィードや私個人宛に送られてきたテスラに対する否定的な内容の量には、かなり驚かされました。

それは、通常の電気自動車に対する根拠のない神話やナンセンスな意見とはかけ離れています。このテスラに対する反感は、非常に具体的なもので、すべてはイーロン・マスク氏に関することです。そして、マスク氏は今回の危機に対して、自分を責める以外にない状況なのです。

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https://youtu.be/N-Tib50ya8w

多方面にわたるダメージ

テスラ長年のCEOであっるマスク氏は、自身の物語を変えてしまいました。もはや技術革新で注目を集めるスターではなく、過激主義の権化と化すような行動で注目を集めています。超右翼的な主義への支持、複数のナチス式敬礼疑惑、自身のソーシャルネットワークXでの人種差別的な投稿や反トランスジェンダーの扇動、そして最も重要なのは、 いわゆる「政府効率化省(DOGE)」のトップとして、米国政府機関を荒らしまわったことでしょう。

マスク氏がDOGEから離れる可能性があることを示す兆候はいくつかあります。特に、彼が支援し、大金を投じたウィスコンシン州最高裁判所選挙が完全に裏目に出た後には、その傾向が強まりました。そして、イーロン・マスク氏の行動に起因するテスラへのダメージはすでに明らかです。欧州と英国での販売台数は急落し、北米での販売台数はせいぜい横ばいといったところです。同社は今週、2025年第1四半期に世界全体で336,681台の車両を納車したと発表しましたが、これは前年同期比で13%もの減少です。

しかし、マスク氏がテスラブランドの唯一の顔であるのと同様に、彼の最近の政治活動はテスラが抱える問題の嵐の一部でしかありません。その多くは、2019年までさかのぼるマスク氏の決定に起因しています。それらの行動が、同社を現在の苦境に導きました。同社が現在直面している相互に関連する要因をすべて理解するには、詳細に踏み込む必要があります。

サイバートラックの惨敗

過激なデザインで賛否両論を呼んだサイバートラックは、実際には販売台数の惨敗を招きました。当初の予想を大幅に下回る販売台数で、北米での販売台数は1年で約5万台にとどまりました。確かに2024年にはアメリカで最も売れた電気ピックアップトラックでしたが、今では欲しいと思った人はほぼ全員が購入したようです。私たちは今、大型で銀色のバッテリー式電気自動車というディストピア映画の小道具のようなEVの市場規模を知っています。そして、それは世界最大の時価総額の電気自動車会社を支えるには十分な販売規模ではありません。

さらに悪いことに、サイバートラックはこれまでのテスラのどのモデルとも異なり、現在は北米限定販売です。その巨大なサイズと独特な構造により、世界中の他の地域では文字通り販売が難しいでしょう。12月、テスラは「現時点では」中国でサイバートラックを販売する計画はないと発表しました。欧州では、このステンレススチール製の電動ピックアップトラックが歩行者保護のルールに準拠できるかについて、疑問が残っています。

2019年に初めて公開され、200万以上の予約を受けたはずの次期製品としては、かなり制限があるように思われます。

型遅れの車種、真の競合

より手頃な価格の量産型テスラ、モデルYクロスオーバーとモデル3セダンは、3年ごとに更新され、5~7年で完全に買い換えられる市場では、今や旧製品です。電気自動車の世界は今、ガソリン車よりも速いペースで急速に進化していますが、電気自動車のパイオニアであるテスラ車のモデルチェンジは低迷しています。確かに、モデルYの「ジュニパー」のリフレッシュ版が今まさに米国市場に登場したばかりですが、世界で最も売れている車でも、数多くの新しい、そしてしばしばより優れた競合車種に対しては、できることは限られています。

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これは、2017年にモデル3が発売されたとき、あるいは2020年初頭にモデルYが現れたときには当てはまりませんでした。それ以来、リヴィアンやルーシッドも含め、大手メーカーから24車種以上の新しいEVが市場に投入されています。中国に関しては、テスラから必要なものを明確に学び、大きく前進しています。仮にマスク氏の奇行が無かったとしても、販売台数が一夜にして昨年の水準に戻ることはないでしょう。

それに、本当にテスラが欲しいとしても、なぜ今、新しいものを購入する必要があるのでしょうか? 怒ったオーナーが他のEVに乗り換えることで、中古のテスラが市場に急増しているため、テスラは自社製品である「使用感が少ない」製品との競争にも直面しています。 中古のテスラは、外観が現在の新品とほとんど変わらないだけでなく、小売価格の下落により、新品と比較しても驚きのコストパフォーマンスを実現しています。

2万5000ドルの廉価版テスラは実現せず

昨年10月、マスク氏は2020年に最初に約束した「2万5000ドルの廉価版テスラ」から撤退したと発表しました。 ロボタクシーではない2万5000ドルのテスラを販売するという考えを「無意味」で「愚か」と彼は呼びました。 彼のコメントは、中国製のEVは貿易障壁がなければ「世界のほとんどの他の自動車メーカーをほぼ壊滅させる」ほど優れていると発言した数ヶ月後のことでした。因果関係があるのでしょうか? 可能性は十分にあるように思えます。

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北米では、新車販売台数の増加を阻む障壁として、価格の手頃さがますます重要視されるようになっています。市場では、より安価な車が切望されています。本当に手頃な価格のEVは飛ぶように売れるでしょう。そして、テスラはそれを実現するのに最も適した企業だったかもしれません。

しかし、その分野はヒョンデと起亜に明け渡され、さらに、間もなく発売されるシボレー・ボルトEVに奪われることになるでしょう。

中国は乗り越えた

2020年初頭、世界がコロナのロックダウンに入ったのと同時に、ギガ上海で製造されたテスラモデル3が中国で発売されました。 モデルYはその後1年以内に発売開始されました。 この2つの車は、中国国内のブランドがこれまで喚起することのなかった中国人の購入者の間で、EVへの情熱に火をつけました。 彼らは、技術的に進んだ欧米の自動車ブランドを中国の自動車市場の中心に引き入れ、上海ギガファクトリーの販売台数は急上昇しました。

しかし、その時代は終わりました。初期に多額の補助金を受けていた中国メーカーの製品が大幅に改善され、今では地元の顧客のニーズにより良く応えられるようになったため、テスラは今では時代遅れで、古くさい、最新の中国国内ブランドには遠く及ばない、特にソフトウェアやインフォテインメントサービスではそう見られています。中国では、テスラは信頼性が高く実績のあるブランドと見られていますが、今では画期的なブランドとは程遠い存在です。

その証拠をお探しですか? モデルYのアップデートでも、中国での販売台数11.5%減を覆すことはできませんでした。中国では、DOGEやマスク氏の政治的な動きは、EV購入者にとってほとんど関心事ではありません。

「充電の堀」は消えた

テスラが2012年に独自のDC急速充電ネットワークを米国中に構築すると発表したとき、他の業界はそれを非常識だと考えました。他のEVメーカーが採用するCCS充電スタンダードがまだ最終決定されていない中、2年以内にテスラ車で全米横断ドライブが可能になりました。車に深く統合されたスーパーチャージャーはシームレスで正確であり、市場に出回っている他のEVの体験とは桁違いの素晴らしいものでした。

2023年、フォードはテスラと契約を結び、同社のEVをスーパーチャージャーで充電できるようにしました。ゼネラルモーターズも数週間以内に同様の対応を行い、他の業界もそれに続きました。テスラにとっては、スーパーチャージャーネットワークを北米最大の充電ネットワークとして拡大し続けるための追加収入というメリットがあります。

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その反面、テスラを推奨する最も強力な理由であることが多かった、テスラの北米における「充電の堀」は、今や消滅しました。テスラのドライバーは、もはや自分たち専用の、疑いなく優れた充電ネットワークを独占することはできなくなりました。今では、庶民もそれを利用できるのです。(欧州では数年前に共通コネクタが義務付けられたため、テスラの充電ステーションは、それらの市場におけるすべてのEVに長年サービスを提供してきました。)

もし今、テスラのような電気自動車が手に入るなら、おそらく航続距離や機能もさらに優れていて、マスク氏の余計な荷物を一切持たずにスーパーチャージャーネットワークを利用できるのであれば、なぜそれを選ばないのでしょうか?

ロボタクシーへの執着

おそらく最も厄介なのは、マスク氏が消費者向け自動車の製造・販売というハードなビジネスへの関心を失っているように見えることです。同氏は、いわゆる自動運転に全力を注いでおり、同社は「ロボタクシー」ビジネスモデルに軸足を移し、所有するネットワーク上で稼働する車両を製造し、オンデマンドの無人タクシーサービスを提供しようとしています。そして、同氏は、同社が提案するサイバーキャブモデルを年間200万~400万台販売できると主張しています。

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2人乗りのハッチバック車であるこの車両は、昨年秋に発表された際には驚きの声が上がりました。 乗客用の座席が2つしかないタクシーはほとんど存在しないからです。 ロボバンは斬新なコンセプトですが、発表以来、それ以上のものになるという兆候はまったく見られません。 噂によると、テスラのラインナップに低価格のサイバーキャブが追加される可能性もありますが、ハンドルと運転者用コントロールが付いた車両になるでしょう。

しかし、2人乗りの車は米国市場ではごく一部のシェアしか占めていないため、真剣に検討されるには、信じられないほど低価格でなければならないでしょう。メルセデスのスマートの年間販売台数が最も多かったのは2009年で、14,600台が購入されました。その後、再び1万台を販売した年は一度だけです。

自動運転ソフトウェアに関しては、テスラのビジョン・オンリー・システムは、少なくとも市場で最高のレベル2(目視・手動操作)システムであるという意見もあるかもしれませんが、ほとんどの分析家は、運転手を必要としない完全自動運転はおろか、手放し運転にもまだほど遠いと述べています。

テレメトリ社の市場調査担当副社長であるアナリストのサム・アブエラサミッド氏は、年間数百万台のサイバーキャブのアイデアについて、次のように率直に述べています。

「カメラのみのシステムに固執する限り、それは決して実現することはないでしょう。」

一方、GM、フォード、メルセデスなど、複数のセンサーによるハンズフリーのアクティブクルーズコントロールはすでに提供されています。

マスク氏無しで生き残れるか

私は自動車業界のアナリスト3人に連絡を取り、この重要な質問を投げかけました。テスラはマスク氏なしで生き残れるでしょうか?3人とも「イエス」と答えましたが、それぞれ微妙にニュアンスが異なりました。

S&Pグローバルのステファニー・ブリンリー氏は慎重ながらも楽観的でした。

「可能性はあると思います。保証されているわけではありませんが、テスラは生き残り、最終的にはさらに成長する可能性が高いでしょう」

ブリンリー氏は、フォルクスワーゲンの世界的な排ガス不正問題、フォードのタイヤ分離とピント火災、ゼネラルモーターズの主要な安全リコールなど、大手メーカーが乗り越えてきた複数のスキャンダルを挙げました。

テレメトリのサム・アブエルサミッド氏は、テスラが生き残れることに同意しました。しかし、以下のように意見しました。

「私たちが慣れ親しんできた企業とは異なる企業になる必要があります」

同氏は、テスラの成長期はすでに過ぎ去り、広く喧伝されている年間2000万台の生産台数達成の可能性は「ほぼゼロ」であり、中国での販売台数は減少を続けるだろうと指摘しました。また、同氏は、数百万台のロボタクシーの実現は「幻想」であり、テスラの将来の見通しについて次のように総括しました。

「テスラは、より小規模な企業となるだろう。」

また、調査会社オートパシフィックの製品および消費者動向担当マネージャー、ロビー・デグラフ氏は以下のように語りました。

「テスラは間違いなく、電気自動車業界に変化をもたらし、リーダー的存在となってきました。しかし、実際には、購入者にとって、より良く、より魅力的な選択肢が他にもたくさんあるのです。テスラは、市場に関係なく、競合他社に追い抜かれるリスクがかつてないほど高まっています。」

一方、テスラの長年の強気派であるウェドブッシュ証券のダン・アイブス氏は先週、テスラブランドへのダメージは今や「マスク氏とテスラにとってのブランドの危機的瞬間」にまでエスカレートしていると述べました。同氏は、名目上のCEOであるマスク氏に、再び経営の舵取りを担うよう呼びかけました。

「回復不能」

また、テスラの支援者たちと仕事や社交の場で重複する関係にあるため匿名を条件にコメントを求めたシリコンバレーのベンチャーキャピタリストにも話を聞きましたが、その人物の見方はそれほど楽観的ではありませんでした。

「他のテクノロジー企業の経営陣は、自社の事業の要となる要素を理解しており、それを守るための選択を行っています。マスク氏は、自身の行動がテスラに与える影響を考慮していないようです。彼の政治的信条や政治活動は、顧客の考えと一致していないことは明らかです。彼はテスラのビジネスを守ることを気にかけなかったか、あるいはこのような反発があることに気づいていなかった。あるいはその両方でしょう。彼はブランドに回復不能なダメージを与えたと思います。テスラの購買層となり得る集団にとって、テスラは死んだも同然なのです」

歴史を無視する者

経験豊富な自動車業界の記者やアナリスト、さらには空売り屋でさえ、苦い経験からテスラやマスク氏に反対の立場を取らないことを学んできました。 テスラが「九死に一生を得る」ような経験をしたかどうかは、今後何年も経たなければわからないでしょう。 あなたが個人的にテスラを購入するか、あるいは所有するテスラを売却するかは、もちろんあなたの自由です。 しかし、テスラはほぼすべての面で逆風に直面しており、その将来性には大きな疑問が残ります。

同社の将来は、モデルSの発売前にマスク氏が自らのポケットマネーで給与を支払わなければならなかったとき以来、しばらくぶりに不安定な状況にあるように見えます。時代遅れの製品と、有害で非常にエキセントリックなCEOをこれほどまでに兼ね備えたブランドは、なかなか思い浮かびません。思い当たるのはマカフィーとマイピローの2社だけです。どちらも、グローバルな自動車業界で成功するために必要な何年にもわたる何十億ドルもの投資のようなものは必要としませんでした。

そこで、教訓を得るために自動車の歴史を振り返ってみましょう。そのひとつは、急進的な新しい技術や車両を開発した企業が、その革新から長期的に利益を得るとは限らないということです。1921年にデュースンバーグが四輪油圧ブレーキを導入しました。 ディスクブレーキは1949年にクロスレイ(およびクライスラー)に現れました。 ボッシュが発明したガソリン直噴は、今は無きドイツのメーカーの小型2サイクルエンジンに以前は使用されていました。 先進的な車両で新しい分野を開拓することは非常に難しく、非常に時間がかかり、また利益が少ない場合も少なくありません。

自動車に関するトリビアの定番問題として、横置きエンジンと前輪駆動の小型車の量産販売を最初に手がけたのはどの会社か、というものがあります。 リアエンジン式小型車が全盛を誇っていた時代に開発されたこの画期的なパワートレインは、スペース効率が極めて高く、60年にわたる小型車の基本設計となりました。

その答えは、ブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)です。BMCはもはや存在すらしません。

BMCの問題は、悪質な経営、品質の悪さ、そして製品決定の悪さというようなものが原因でした。何十年にもわたって経営陣がとった行動は、あまりにも不十分で、あまりにも遅すぎました。英国の大衆向け自動車産業の崩壊を誰か1人のせいにすることはできません。

一方、テスラは事実上、1人の人物によるほぼ唯一の製品です。 初期の最も影響力のある幹部の多く、最高技術責任者(CTO)のJT・ストローベル氏やバッテリー担当のカート・ケルティ氏などは、とっくに退社しています。 テスラを現在の状況に導いた決定は、すべてマスク氏によって下されたようです。

同社の取締役会によって彼が解任されない限り、つまり、それは今日では非常に考えにくいことですが、今世紀最大の電気自動車のパイオニアの最終的な運命は、すべて彼に委ねられていたと歴史に記録されるでしょう。

良くも悪くも。

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