2026年の幕開けは、テスラにとって残酷なまでの現実を突きつけるものとなりました。欧米での販売急減、中国での苦戦、その一方でアジアの一部で見せた驚異的な伸び。これらの断片的なニュースをつなぎ合わせると、テスラが今、自動車メーカーから「物理AI・ロボティクス企業」へと脱皮しようとする、痛みを伴う過渡期にあることが浮かび上がってきます。
1. 欧米市場での「大崩壊」:補助金終了とブランド疲弊
かつてテスラの牙城であった欧米市場で、信じがたい数字が記録されました。
欧州:かつてない「アンプラグド(プラグが抜かれた)」状態
欧州におけるテスラの販売状況は、一部のアナリストが「The Great European Unplugging(欧州の大規模なプラグ抜け)」と呼ぶほどの惨状を呈しています。
- ノルウェーの衝撃: EV先進国でありテスラのドル箱だったノルウェーで、1月の登録台数が前年同月比で88%も減少しました。これは、長年続いたEV免税措置が2026年1月1日に完全撤廃されたことが主因ですが、それにしても劇的な数字ですSource。
- 主要国での連鎖的な下落: オランダでは67%減、イギリスでは57%減、フランスでも42%減と、軒並み販売が半減していますSource。
- 要因: 補助金の終了だけでなく、CEOイーロン・マスクの政治的言動による「ブランド毀損」や、モデルラインナップの陳腐化が、環境意識の高い欧州ユーザーをフォルクスワーゲンやBMW、そしてBYDへと流出させていますSource。
米国:ホームマーケットでの退潮
米国でも状況は芳しくありません。2025年9月に連邦税額控除(7,500ドル)が期限切れを迎えた影響が直撃しています。
- 1月の米国販売: 前年同月比で約17%減少したと推定されています。これは4ヶ月連続の減少であり、補助金なしでは需要を維持できないという「成熟の罠」に陥っている可能性がありますSource。
- 在庫の積み上がり: テスラは販促メールを乱発しており、需要喚起に必死ですが、価格競争力だけでは解決できない構造的な問題に直面していますSource。
2. 中国市場のパラドックス:国内「半減」でも輸出は「過去最高」
世界最大の自動車市場である中国では、テスラの巧みな戦略と苦境が同居しています。
- 国内販売の急ブレーキ: 1月の中国国内での小売販売は45%減の18,485台に留まりました。BYDやXiaomiといった強力なライバルに対し、モデルYやモデル3の新鮮味が薄れていることが要因ですSource。
- 輸出ハブとしての上海ギガファクトリー: しかし、ここでテスラは「輸出」に活路を見出しました。1月の上海工場からの輸出台数は50,644台に達し、前年比71.5%増を記録。これは同工場の輸出としては過去2番目の高水準ですSource。
注目すべきは、カナダ向けの動きです。カナダが中国製EVに対する関税を引き下げたことを受け、テスラは上海からカナダへの輸出を再開し、北米全体の利益率維持を図っていますSource。中国国内で売れなくとも、世界中にばら撒く生産拠点として上海をフル稼働させているのです。
3. アジアの「希望の光」:日本と韓国で起きた異変
欧米中が苦戦する中、意外な地域でテスラが爆発的な伸びを見せました。それが日本と韓国です。
日本:ショッピングモール戦略の勝利
日本での1月の販売は前年比で約90%増と、驚異的な成長を遂げました。
- 「待ち」から「攻め」へ: これまでの郊外型店舗から、イオンモールなどの高トラフィックなショッピングセンター内への出店(1年で16店舗開設)へと戦略を転換しました。「テスラを知らない層」にリーチしたことが奏功していますSource。
- 金融緩和なみのインパクト: モデル3とモデルYに対して5年間の金利0%キャンペーンを実施。補助金と合わせると、月々の支払額が劇的に下がり、購入のハードルを一気に押し下げましたSource。
韓国:補助金待ちを無視した購入ラッシュ
通常、韓国の1月は政府の補助金決定待ちでEVが売れない時期です。しかし、2026年1月は前年同月のわずか5台から1,966台へと販売が急増しました。補助金がなくとも競争力のある価格設定とブランド力が、消費者を動かした稀有な例となりましたSource。
一方で、オーストラリアではBYDの猛追を受け、前年比32%減と苦戦を強いられていますSource。
4. 「モデルY ジュニパー」と「モデルS/X 終了」の意味
テスラはこの局面をどう打開しようとしているのでしょうか? 答えは「選択と集中」、そして「AIへの完全シフト」です。
モデルS・モデルXの終焉
2025年第4四半期の決算説明会で、テスラは衝撃的な方針を示唆しました。フラッグシップであるモデルSとモデルXの生産を終了し、そのリソースをAIやロボット(Optimus)、ロボタクシー(Cybercab)に振り向けるというのですSource。
「高級車メーカー」としての看板を下ろし、「マス向けモビリティとAIの会社」になるという決意表明とも取れます。
モデルY「ジュニパー」の投入
北米では、待望の改良型モデルY(通称「ジュニパー」)が投入されました。テスラはこれを「2026年モデル」として販売しています。
- 何が変わったのか?: 空力性能の4%向上、航続距離の伸長、静粛性の向上、そしてフロントバンパーカメラの搭載など、中身は別物と言えるほど進化していますSource。
- 戦略的意図: 2025年初頭の発売にもかかわらず「2026年モデル」と銘打つことで、新しさを強調し、買い控えを防ぐ狙いがありますSource。
5. 結論:テスラは「死」に向かっているのか、それとも「脱皮」か?
2026年1月の数字だけを見れば、テスラは明らかに危機的状況にあります。欧州でのシェア低下、米国での需要減退は、従来の自動車メーカーとしての評価軸では「売り推奨」のサインかもしれません。
しかし、テスラは意図的に「自動車販売」という土俵から降りようとしているようにも見えます。
- ハードウェアの整理: 古いモデル(S/X)を切り捨て、売れ筋(Y/3)と次世代機(Cybercab)に絞る。
- AIへの全振り: 2026年の設備投資額は200億ドルに達し、その大半がAIインフラとロボティクスに向けられますSource。
- 収益構造の変化: 自動運転機能(FSD)のサブスクリプション化やエネルギー部門の利益率向上が、車両販売の落ち込みをどこまで補えるかが勝負です。
2026年は、テスラが「ただの車屋」で終わるか、それとも「世界を動かすAI企業」として再評価されるかの分水嶺となるでしょう。1月の販売減は、その巨大な賭けの始まりに過ぎないのかもしれません。
参考文献:
- Tesla (TSLA) US sales estimated to have dropped 17% in January – Electrek
- The Great European Unplugging: Tesla Registrations Crater in Q1 2026
- Tesla China Reaches Second-Best Exports Month Ever While Local Demand Falls
- Tesla’s Retail Reset in Japan Shows How EV Sales Can Take Off Fast
- Tesla launches Model Y Juniper for North America
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