テスラが「久しぶりに」日本国内で全ラインナップ30万円値下げ

tesla-price-decrease

最近、世界的なEV需要減退が伝えられる中で、世界で最も電気自動車を売っているテスラが、米国、中国、欧州に続いて日本国内でも30万円値下げに踏み切りました。

過去最長に価格変動なし

以下のグラフを見ていただくと分かるように、モデルYとモデル3に関しては、今回の値下げ(もしくは値上げ)が、これまでの価格調整の中で、値段が変わらなかった期間が最も長い状況でした。直近の価格変動は、リフレッシュ版のモデル3、いわゆるモデル3ハイランドが登場した2023年9月1日ですので、半年以上その価格が維持されてきたことになります。

それまでテスラは、日本国内だけでなく、世界中で非常に小刻みにかつダイナミックに価格を調整していました。ただ、競争環境を意識して2023年年初に実施された米国と中国での大幅値下げによって、特に中国市場におけるEV価格戦争が起こった状況でした。実際に、中国市場でトップを走るBYDですら、この価格競争に関しては非常に厳しい戦いになることを警告しています。

これまでの状況を見ていると、テスラは値下げ(や値上げ)を実施する場合、需要の喚起という側面より、製造原価の低下(高騰)が引き金になっているように思われます。実際に、かつてイーロン・マスクCEOは過去に適正粗利を確保して販売価格を決めるという趣旨の発言をしています。特に直近では、BEV(バッテリー電気自動車)のコストの20~30%を占めるともされているリチウムイオンバッテリーの価格が大幅に低下していることが直接影響しているのかもしれません。

価格変動の弊害

tesla-model-3-highland-red

先日、モデルS/X/Yを米国で値下げした際、イーロン・マスクCEOは通常の自動車販売ディーラーも顧客や店舗によって販売価格を調整しているということを指摘していました。確かにその通りなのですが、テスラとの大きな違いは、その情報が「世界中に」オープンになるかどうかという事でしょう。直販メーカーだからこそできるテスラのダイナミックプライシングですが、これにはいくつかの弊害もあります。

リセールバリューへの影響

今年の年明けに米国の大手レンタカー会社ハーツが電気自動車から内燃機関車へ軸足を戻すというニュースが流れました。また、これと同時期にドイツのERPベンダーSAPも、今後法人車両に電気自動車を採用しないことを宣言していました。この2社の掲げた理由は、(テスラだけでなく)EVの価格変動が大きく、事業用資産としての価格安定性が見込めず、償却資産としての価値が大きく棄損する、というものでした。

確かに、事業用資産の価値が、ある特定のメーカーの一種気まぐれな価格変動に左右されるようなことは避ける必要があるのは納得できます。これは、法人ユーザーだけではなく、個人ユーザーにも同じことが言えて、特に値下げ後のテスラ車の下取り評価が一気に下がるので、困った状況なのです。

通常モノの値段は需給のみで決まるものと思うのですが、どうもテスラの場合にはそうではないルールがまかり通っているように感じます。

目指すところは粗利ゼロ

最近、世界中で10%以上の従業員のレイオフを実施したことが大きなニュースになっていましたが、そもそもテスラ(というかイーロン・マスクCEO)が目指している世界は、電気自動車の拡販というような小さな事では無いのが見て取れる出来事でした。株主待望の廉価版テスラ、いわゆるモデル2を一旦中断したうえでロボタクシー≒FSDに全力を尽くすことで、単なる電気自動車販売から、モビリティを提供するサービス事業者へ変わっていくのを本気で目指しているのだと思います。そういう意味では、ロボタクシーの販売自体では設ける必要もなくなって、「粗利ゼロ」でも大丈夫になります。かつての日本国内での携帯電話と同じです。

こうした非常に困難な状況の中で、明日発表される2024年第1四半期決算の状況と、常識はずれのイーロン・マスクCEOが一体どんなことを話すのか非常に楽しみです。

テスラ関連の最新ニュースをほぼ毎日アップしていますのでこちらを参照ください。

人気記事

テスラでバッテリー残量ゼロになったらどうする? JAFの急速充電レスキュー呼出手順と車載必須ツール
ブレーキフルードも配管も全廃。テスラCybercabが採用した「完全ドライEMB」の構造と4輪独立制御
テスラ画面でApple CarPlayとAirPlayがネイティブ動作。有志開発者がRyzen車載環境で実現した仕組み
ソフトウェアアップデート2026.38で何が変わる? Intel搭載車へのSC構内3Dマップ開放と「ダイナミック・ヘッドライト・レベリング」の正体
テスラ130kW対応の新型チャデモアダプターは買うべきか?2027年1月発売・10万円弱の費用対効果と充電口数12倍の実態
日本の狭い路地でテスラFSDに勝てるか?中国トップAIベンダーが仕掛けるローカライズ自動運転の勝算
なぜテスラは注文画面で大々的にアピールしないのか? パフォーマンス限定「生涯コネクティビティ」の譲渡制限と実質維持費
前面・側面・横転すべてで5つ星。2026年型テスラModel 3がNHTSA全試験で最高評価を獲得した骨格設計
狭い路地案内や誤った速度制限は直るのか? テスラが車載カメラ映像から自前生成するAIマップの実力
満車時は1分100円。テスラSC「充電時間超過料金」の課金条件と5分猶予ルール、米国で進む80%混雑料金の現在地

新着記事

元テスラ開発責任者が「カメラ単体は物理を無視した宗教」と語る真意。自動運転でレーダーを外した功罪とLiDAR併用の境界線
高速道路で143円/kWhは高いのか? チャデモの従量課金化で変わるテスラ長距離ドライブの充電戦略
テスラ、メルセデス、BMW、トヨタ×Momenta。自動運転で分かれた「レベル3限定派」と「E2E汎用派」の決定的な差
テスラでバッテリー残量ゼロになったらどうする? JAFの急速充電レスキュー呼出手順と車載必須ツール
塗装工場なしでどう色をつける? テスラ「サイバーキャブ」が検討したインモールドフィルム成型の仕組み
欧州は「Assisted Driving」へ呼称変更。名前と実態がズレるテスラ運転支援の責任境界と購入判断
ハンドル・ペダルなし自動運転車が12月から国内一律認定へ。国交省の保安基準改正とテスラ「サイバーキャブ」公道走行の要件
テスラ新型モデル3/Yの給電対応で東京都ZEV補助金「+10万円」は使える? クール・ネット東京の認定条件と別売アダプターの扱い
Intel搭載のモデル3/YにもGrokが来る? アップデート2026.38で見えた旧型Atom搭載車へのサポートファイル追加
テスラFSDと何が違う? 国産スタートアップ「チューリング」がカメラ7台と独自AIで挑む完全自動運転の仕組み

※免責事項:この記事は主にテクノロジーの動向を紹介するものであり、投資勧誘や法律の助言などではありません。また、記事の正確性を保証するものでもありません。加えて、記事内のリンクにはアフィリエイトリンクが含まれていることがあります。また、掲載情報によって起きたいかなる直接的及び間接的損害に対しても、筆者・編集者・運営者は一切責任を負いません。更に、運営者はテスラ株式のホルダーです。

タイトルとURLをコピーしました