2026年が幕を開け、電気自動車(EV)業界で最も注目を集めているトピックの一つが、テスラのFull Self-Driving(FSD:完全自動運転)機能の欧州展開です。長らく米国のユーザーに限られていたこの革新的な技術が、ついに大西洋を渡ろうとしています。
イーロン・マスクCEOはダボス会議(世界経済フォーラム)において、早ければ2026年2月にも欧州および中国でFSDの規制当局による承認が下りる可能性があると発言し、市場とユーザーの期待を一気に高めました。しかし、その実現には依然として高いハードルと、錯綜する情報が存在します。
本記事では、最新の現地レポートや規制動向をもとに、テスラFSDの欧州展開の現在地と今後の見通しを徹底解説します。
1. ダボス会議での衝撃:イーロン・マスクの「2月承認」発言
2026年1月、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムにおいて、イーロン・マスク氏はテスラのソフトウェア戦略について大胆な予測を口にしました。彼は、「欧州でのFSD(Supervised:監視付き)の承認を、うまくいけば来月(2月)にも取得できることを望んでいる」と述べ、中国についても同様のタイミングを目指していることを示唆しました。
この発言は、単なる希望的観測以上の重みを持っています。テスラはEV販売の成長鈍化に直面しており、ソフトウェア収益への依存度を高めようとしています。カリフォルニア州での登録台数が前年比11.4%減少するなど、ハードウェア販売の逆風の中で、FSDのグローバル展開は同社の株価と将来性を左右する決定的な要因となっているのです。
2. 鍵を握るオランダ当局「RDW」とEUへの波及
なぜ「2月」なのか?その根拠は、オランダの車両当局であるRDW(Rijksdienst voor het Wegverkeer)の動向にあります。
テスラは欧州全域での承認を目指す足掛かりとして、オランダ当局との協議を重ねてきました。RDWは2026年2月にFSDに関する決定を下す見込みとされており、ここでの承認が「ドミノ倒し」の最初のピースとなることが期待されています。
EUの規制枠組みでは、ある加盟国で車両や技術の型式認証(Type Approval)が下りれば、相互承認協定などを通じて他の加盟国でも展開が可能になるケースがあります。テスラは、オランダで国家承認(National approval)を取得し、その後、他のEU諸国がその免除措置(Exemption)を即座に認識して展開を許可するシナリオを描いています。
これが実現すれば、ドイツ、フランス、北欧諸国など、テスラ人気が高い市場で一気にFSD機能が解禁されることになります。
3. 規制の壁:UN-R-171と「安全性」の証明
しかし、道のりは平坦ではありません。欧州の規制、特に国連欧州経済委員会(UNECE)が定めるUN-R-171などの規則は、米国の規制よりもはるかに厳格です。
テスラは、現在の欧州の規制が「時代遅れ」であり、FSDの機能を既存のルールに無理やり適合させようとすれば、かえって安全性が損なわれると主張しています。例えば、システム主導の車線変更(ハンズオフ)などは、現行の欧州ルールでは制限されており、テスラはこれらに対する「免除」を求めています。
テスラは規制当局を説得するために、以下のような実績を強調しています:
- 100万キロメートル以上の欧州路上テスト:すでに欧州17カ国で社内テストを実施済み。
- 安全性データの提出:最新の安全性レポートにFSD関連の文書を含め、当局に提示。
- デモンストレーションの実施:ほぼすべてのEU加盟国の規制当局に対し、FSDのデモ走行を提供。
4. 準備は万端?拡大するデモ走行とソフトウェアの「国境対応」
規制当局との交渉と並行して、テスラは地ならしを着々と進めています。
一般向けライド・アロング(同乗体験)の拡大
テスラは欧州の消費者にFSDの実力を直接体験してもらうため、「ライド・アロング」プログラムを拡大しています。当初はドイツ、フランス、イタリアで開始されましたが、最近ではハンガリー、フィンランド、スペインにも対象を広げました。
さらに、ドイツのシュトゥットガルト、フランクフルト、デュッセルドルフなどの主要都市では、この体験プログラムを2026年3月まで延長しており、市場の関心は非常に高い状態が続いています。
新機能「国境検知」の実装
技術的な準備も進んでいます。最近、米国のテスラオーナーがメキシコとの国境付近を走行中に、FSD画面に興味深いメッセージが表示されたことが報告されました。それは「Upcoming country border — FSD (Supervised) will become unavailable(まもなく国境です。FSDは利用できなくなります)」という警告です。
これは、テスラが国ごとに異なる規制状況に対応するシステムを実装したことを意味します。米国・メキシコ間よりも国境通過が頻繁な欧州において、この機能は不可欠です。たとえば、「オランダでは許可されているが、隣のベルギーに入った瞬間に機能をオフにする」といった制御が可能になるため、欧州展開への布石として非常に重要なアップデートと見られています。
5. 楽観論への警鐘:「イーロン・タイム」と中国からの冷や水
マスク氏の発言やテスラの動きは希望に満ちていますが、冷静な見方も必要です。マスク氏のタイムライン(通称「イーロン・タイム」)は、しばしば現実よりも楽観的すぎる傾向があるからです。
その最たる例が中国市場での反応です。マスク氏が「中国でも来月(2月)承認の可能性がある」と発言した直後、中国の国営メディアであるチャイナ・デイリーは、政府に近い信頼できる情報筋の話として、2月の承認は「真実ではない(Not true)」と報じました。
中国当局はデータセキュリティの問題などで進展を認めているものの、完全な承認はまだ先であると釘を刺しました。中国でのこの迅速な否定は、欧州の規制当局も同様に慎重な姿勢を崩さない可能性を示唆しています。オランダのRDWが2月に何らかの判断を下すとしても、それが「即時の全面解禁」につながるかどうかは不透明です。
6. まとめ:2026年は「FSD欧州元年」になるか
テスラの欧州におけるFSD実現は、もはや「もし(If)」の話ではなく「いつ(When)」の問題になっています。
- ポジティブな材料:
- オランダRDWによる2月の審査予定。
- 欧州各地でのデモ走行プログラムの成功と拡大。
- 国境対応機能などのソフトウェア準備。
- 米国テキサス州オースティンでは、すでにセーフティモニターなしのロボタクシー運行が(規模は小さいものの)始まっているという実績。
- 懸念材料:
- マスク氏のタイムラインに対する規制当局(特に中国)の否定的な反応。
- EU特有の複雑な官僚的手続きと、UN-R-171への適合問題。
2026年中にFSDが欧州の公道を走り始める可能性は極めて高いと言えます。たとえマスク氏が予言した「2月」に間に合わなかったとしても、スウェーデン、ノルウェー、ドイツといった主要市場での導入に向けたカウントダウンは確実に進んでいます。
テスラオーナーにとっては、愛車が真の能力を発揮する日が近づいていることは間違いありません。2月のオランダ当局の発表が、欧州の自動車史における大きな転換点になるのか、引き続き注視が必要です。
テスラ関連の最新記事を毎日随時アップしていますので、過去のニュースはこちらを参照ください。
人気記事
新着記事
※免責事項:この記事は主にテクノロジーの動向を紹介するものであり、投資勧誘や法律の助言などではありません。また、記事の正確性を保証するものでもありません。加えて、記事内のリンクにはアフィリエイトリンクが含まれていることがあります。また、掲載情報によって起きたいかなる直接的及び間接的損害に対しても、筆者・編集者・運営者は一切責任を負いません。更に、運営者はテスラ株式のホルダーです。

コメント