2026年1月初旬に発表された各社のデータによると、2025年の電気自動車(BEV)販売台数において、中国のBYDが初めてテスラを上回りました。
- BYD (BEVのみ): 約225万6,714台(前年比 約27.9%増)
- テスラ: 約163万6,129台(前年比 約8.6%減)
BYDはプラグインハイブリッド車(PHEV)を含めた新エネルギー車(NEV)全体では以前から世界首位でしたが、純粋な電気自動車(BEV)の販売台数でもテスラを約62万台も引き離し、名実ともに世界No.1の座を獲得しました。
一方のテスラは、2024年に続き2年連続で前年実績を下回る結果となりました。特に2025年第4四半期の販売台数は前年同期比15.6%減の41万8,227台となり、アナリストの予想を下回る厳しい結末を迎えています。
欧州市場で見えた「残酷なまでのコントラスト」
この勝敗を決定づけた大きな要因の一つが、欧州市場でのパフォーマンスです。CnEVPostの報道によると、2025年の欧州における両社の勢いは真逆の結果となりました。
BYD:驚異の270%成長
BYDの2025年の欧州登録台数は18万7,657台に達し、前年の5万912台から268.6%増という爆発的な成長を記録しました。
特に2025年12月単月では、前年同月比229.7%増の2万7,678台を登録し、市場シェアは前年の0.8%から2.4%へと急拡大しています。BYDはEUによる中国製EVへの関税措置があったにもかかわらず、手頃な価格帯のBEVとハイブリッドモデル(PHEV)の両輪で、コスト意識の高い欧州消費者の心を掴むことに成功しました。
テスラ:全月で前年割れ
対照的に、テスラの2025年欧州登録台数は23万8,656台にとどまり、前年比26.9%の減少となりました。
衝撃的なのは、2025年のすべての月において前年同月比マイナスを記録したという事実です。12月の市場シェアも前年の4.1%から3.0%へと縮小しており、かつての圧倒的な支配力は陰りを見せています。
テスラ失速の複合的要因:トランプ政権、マスク氏、そして製品寿命
なぜテスラはこれほどまでに販売を落としたのでしょうか? 複数のメディアが以下の3つの主要因を指摘しています。
1. トランプ政権によるEV優遇策の打ち切り
米国市場において決定的だったのが、政治的な逆風です。
読売新聞によると、トランプ政権下で2025年9月末にEV購入向けの税額控除(補助金)が打ち切られたことが、需要に冷や水を浴びせました。
この政策変更の影響は甚大で、テスラの第4四半期(10-12月)の世界販売台数が前年同期比16%減と大きく落ち込む主因となりました。
2. イーロン・マスクCEOへの反発とブランド毀損
テスラの顔であるイーロン・マスク氏の言動も、販売に影を落としています。
マスク氏の政治的発言やトランプ政権への関与に対し、リベラル層が多いEV購入層の一部で反発が広がり、不買運動(ボイコット)に発展しました。特に欧州や米国の一部では、ブランドイメージの悪化が深刻な顧客離れを招いています。
3. モデルの陳腐化と競争激化
製品ラインナップの問題も無視できません。
主力車種である「モデル3」や「モデルY」は依然として人気ですが、基本設計の古さは否めず、市場にはVW、BMW、フォード、そして中国メーカーなどの競合車が溢れています。
期待されていた「サイバートラック」の2024年登録台数は9,019台にとどまり、ゲームチェンジャーにはなりきれていません。また、完全自動運転(FSD)への注力に対し、消費者が期待したほどの進展を感じられなかったことも購買意欲を削ぎました。
BYDの勝因:垂直統合と「全方位」戦略
テスラが足踏みする中、BYDが躍進した理由はどこにあるのでしょうか。[中国経済新聞]()や[36Kr Japan]()の分析から、その強さの秘密が見えてきます。
サプライチェーンの強みと技術力
かつてイーロン・マスク氏に「技術力が低い」と笑われたBYDですが、今やその技術力こそが最大の武器です。
特に、自社開発の安全かつ高性能な「ブレードバッテリー」や、高効率なハイブリッドシステム「DM-i」は市場で高く評価されています。バッテリーから車両組立までを自社グループ内で完結させる垂直統合モデルにより、圧倒的なコスト競争力を実現しています。
グローバル展開の加速
BYDの成長を支えたのは海外市場です。
2025年の海外販売台数は初めて100万台を突破しました。中国国内市場での過当競争を背景に、欧州、東南アジア、南米へと販路を拡大。2026年には海外販売130万台を目標に掲げています。
また、テスラがBEV専業であるのに対し、BYDはPHEVも手掛けており、充電インフラに不安を持つ層を取り込めたことも、欧州でのシェア拡大(ハイブリッド車が市場の34.5%を占める)に寄与しました。
2026年の展望:逆襲のテスラ vs 王者BYD
2025年は「王座交代」の年となりましたが、2026年はどうなるのでしょうか?
テスラ:ハードウェアから「AI・エネルギー」へ?
テスラは自動車販売の減少にもかかわらず、2025年第4四半期の収益等はエネルギー部門の成長に支えられています。エネルギー貯蔵システムの展開は年間46.7GWhと過去最高を記録しました。
また、市場の関心は「ロボタクシー(Cybercab)」事業に移りつつあります。テスラは2026年にロボタクシーの生産を開始する予定であり、これが株価や将来の成長を牽引するシナリオを描いています。
さらに、低価格モデル(通称モデル2)の投入も噂されており、販売台数の回復なるかが注目されます。
BYD:輸出拡大と「消耗戦」
一方のBYDは、中国国内市場が「2000万台規模の消耗戦」に突入する中、海外展開をさらに加速させる構えです。欧州市場では関税撤廃の動きも報じられており、これが実現すればBYDにとってさらなる追い風となるでしょう。
まとめ
2025年のデータは、EV市場が「テスラ一強」の時代から、群雄割拠、あるいは「BYDとテスラの二強時代」へと完全にシフトしたことを示しています。
EV単体での販売台数で首位に立ったBYDに対し、テスラはAIやエネルギー、自動運転という新たな付加価値で勝負を挑もうとしています。
日本の自動車メーカーにとっても、この地殻変動は対岸の火事ではありません。BYDの猛烈な勢いと、テスラが直面した「政治と需要」のリスクは、今後のEV戦略を考える上で極めて重要なケーススタディとなるでしょう。
テスラ関連の最新記事を毎日随時アップしていますので、過去のニュースはこちらを参照ください。
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