1. 決算ハイライト
2025年第3四半期(7-9月期)、テスラは世界的な納車台数・エネルギー貯蔵導入量で過去最高を記録し、売上・フリーキャッシュフローも過去最高となりました。
主な数値は以下の通りです。
- 売上高:280.95億ドル(前年同期比+12%)
- GAAP営業利益:16.24億ドル(同-40%)
- GAAP純利益:13.73億ドル(同-37%)
- 非GAAP純利益:17.70億ドル(同-29%)
- 営業利益率:5.8%(同-5.01pt)
- フリーキャッシュフロー:39.9億ドル(同+46%)
- 現金・投資残高:416.47億ドル(同+24%)
営業利益・純利益は前年同期比で大きく減少したものの、売上・キャッシュフローは堅調に推移しました。
2. 主要財務指標の推移
売上・利益の推移
- 自動車部門売上:212.05億ドル(+6%)
- エネルギー部門売上:34.15億ドル(+44%)
- サービス・その他売上:34.75億ドル(+25%)
営業費用は34.3億ドル(+50%)と大幅増。AIやR&D投資、販管費増加が主因です。
営業利益率は5.8%と低下し、利益面では厳しい四半期となりました。
キャッシュフロー・バランスシート
- 営業キャッシュフロー:62.38億ドル(前年同期比横ばい)
- フリーキャッシュフロー:39.9億ドル(+46%)
- 現金・投資残高:416.47億ドル
3. 事業別の業績動向
自動車部門
- 納車台数:497,099台(+7%)
- モデル3/Y:481,166台(+9%)
- その他(S/X/サイバートラック等):15,933台(-30%)
- 生産台数:447,450台(-5%)
米国ではEV税額控除の終了に伴い、低価格モデル(モデル3/Y スタンダード)を新たに投入。
中国ではホイールベース延長のモデルYLを発売し、韓国・台湾・日本・シンガポールでも納車が拡大。
欧州ではモデルYが複数国でベストセラーとなり、インドでも納車開始。
エネルギー部門
- エネルギー貯蔵導入量:12.5GWh(+81%)
- 部門売上:34.15億ドル(+44%)
- 部門粗利益:11億ドル(過去最高)
大型定置用蓄電池メガパック3やメガブロックなど新製品を発表し、上海・ヒューストンのメガファクトリーで生産能力を拡大。
サービス・その他
- スーパーチャージャー設置数:7,753拠点(+16%)
- 充電コネクター数:73,817(+18%)
V4スーパーチャージャーの導入で、充電効率・コスト・展開速度が向上。
4. 地域別・製品別の動向
- 米国:EV税額控除終了に伴い、低価格モデルを投入。ロボタクシーの実証運行も開始。
- 中国:6シーターモデルYL投入、納車拡大。韓国が米中に次ぐ第3の市場に成長。
- 欧州:モデルYが複数国でベストセラー。FSD(Supervised)の展開準備中。
- インド:モデルY納車開始。
5. テクノロジー・AI・自動運転の進展
- FSD(Full Self-Driving):v14を10月にリリース。複雑なシナリオ対応力が向上。
- ロボタクシー:ベイエリアでライドヘイリングサービスを開始。オースティンでも展開拡大中。
- AIインフラ:サムスンと提携し、AI半導体の米国生産を開始。AIトレーニング能力はH100相当で81,000基に拡大。
- 新バッテリー・パワートレイン:モデル3/Y スタンダードに新設計バッテリー・パワートレインを搭載し、コスト・効率を両立。
6. エネルギー事業とサービス
- メガパック3/メガブロック:大規模蓄電池の新製品を発表。設置・運用コストを削減し、導入スピードを向上。
- 住宅向け新リースプラン:太陽光+パワーウォールのリースを米国で開始。月額費用を抑え、5年後の買い取りオプションも付与。
- スーパーチャージャーV4:従来比3倍の電力密度、2倍のスタンド数。乗用車500kW、トラック1,200kWの超高速充電に対応。
7. 今後の見通しと経営戦略
- 2026年以降の量産計画:サイバーキャブ(ロボタクシー)、クラス8トレーラー・テスラセミ、メガパック3の量産を2026年から開始予定。
- AI・ソフトウェア収益の拡大:ハードウェア利益に加え、AI・ソフトウェア・フリートベースの収益拡大を目指す。
- 生産能力の最適化:既存工場の稼働率最大化を優先し、新工場建設は慎重に判断。
- 資金繰り:十分な流動性を確保し、不確実性の高い時期でも強固なバランスシートを維持。
8. イーロン・マスクCEOの決算説明会発言
1. 会社の未来への強い楽観と「実現する力」への自信
イーロン・マスクCEOは、決算説明会の冒頭で「私は会社の未来について極めて楽観的だ。未来を予測する最良の方法は、それを実現することだ。そして私たちはテスラチームと共にそれを実現している」と述べ、テスラの長期的な成長と変革への強い自信を示しました。
また、「2025年は非常に興奮する年」であり、「多くのマイルストーンを達成した」とも強調しています。
2. 直面する課題と短期的な不透明感
一方で、マスクCEOは「今後数四半期は厳しい局面になる可能性がある」と警告しました。
その主な理由として、米国のEV税額控除の終了や、トランプ政権による関税政策の影響、世界的な経済・貿易政策の変動など、マクロ経済環境の不確実性を挙げています。
「テスラはマクロ的な自動車需要と無縁ではない。経済的な不確実性が自動車のような大型商品購入を控えさせている」と述べ、需要減速への懸念も示しました。
3. ロボタクシー・AI・自動運転への注力
マスクCEOは、ロボタクシー(サイバーキャブ)や自動運転技術(FSD)、AI・ロボティクス分野への投資と進展を強調しました。
- 「テキサス州で認可が取得できたことでロボタクシーの運行地域が拡大した。年内に新たな都市へ拡大する見通し」と発言。
- 「自動運転と人型ロボット『オプティマス』の開発プログラムの重要性を改めて強調。テスラが車両の自動運転と人型ロボットの自律性において引き続き成果を上げ続ければ、世界で最も価値のある企業になるだろう」と述べました。
- ただし、「関連投資に伴ういくつかの初期の試練はあろう」とも付け加え、短期的なコスト増や収益圧迫の可能性も認めています。
4. 低価格モデル・新型車の進捗
- 低価格モデルについては「6月に初生産、2025年後半に量産開始予定」と説明。
- ただし、米国の税額控除終了前にできる限り多くの車を生産・納車することに注力しているため、量産開始は当初予定より遅れる可能性があると認めました。
- 「これらの製品の目標は、売上高や粗利益率に悪影響を与えることではなく、誰もが愛し、より手頃な価格で欲しいと思う車を作ること」だと強調しています。
5. エネルギー事業・サービス部門の成長
- エネルギー貯蔵(メガパック)やスーパーチャージャー事業の成長を強調し、「エネルギー需要が拡大しメガパックも順調に増えている」と述べました。
- サービス部門(スーパーチャージャー等)は業績の下支えとなっていると説明しています。
6. テスラの「変革」への意欲
- マスクCEOは「テスラは電気自動車と再生可能エネルギー産業のリーダーから、AI(人工知能)、ロボティクス、それらの関連サービスについてのリーダーへと転身を遂げる第一歩を踏み出した」と主張。
- 今後はAI・ソフトウェア・ロボティクス分野での収益拡大を目指す姿勢を明確にしました。
7. 投資家・顧客へのメッセージ
- 「支援してくださる皆様に感謝を申し上げる。私たちは非常に興奮する未来を築いている」と、投資家・顧客への感謝と今後への期待を繰り返し表明しました。
これらの発言から、イーロン・マスクCEOは短期的な逆風や利益率の低下を認めつつも、AI・自動運転・ロボティクス・エネルギー事業など新たな成長分野への投資と変革を強く推進し、テスラの長期的な成長と価値創造に自信を持っていることが読み取れます。
9. まとめ
2025年第3四半期のテスラは、売上・納車・エネルギー貯蔵で過去最高を記録し、キャッシュフローも大幅に改善しました。一方で、営業利益・純利益は前年同期比で大きく減少し、利益率の低下が課題となっています。
AI・自動運転・エネルギー事業への積極投資が続く中、2026年以降の新規事業(ロボタクシー、トラック、蓄電池)の量産開始が今後の成長ドライバーとなる見通しです。
短期的には米国のEV税制変更や関税、世界的な経済・貿易政策の変動など不透明要因が多いものの、テスラはAI・ソフトウェア・エネルギー分野での競争力強化と、グローバルな生産・販売体制の最適化を進めることで、長期的な成長と価値創造を目指しています。
イーロン・マスクCEOの発言からも、短期的な逆風を認めつつ、テスラの変革と未来への強い自信が感じられます。
テスラ関連の最新記事を毎日随時アップしていますので、過去のニュースはこちらを参照ください。
人気記事
新着記事
※免責事項:この記事は主にテクノロジーの動向を紹介するものであり、投資勧誘や法律の助言などではありません。また、記事の正確性を保証するものでもありません。掲載情報によって起きたいかなる直接的及び間接的損害に対しても、筆者・編集者・運営者は一切責任を負いません。また、運営者はテスラ株式のホルダーです。


コメント