テスラの人気セダン、モデル3が欧州市場や日本市場で大刷新されました。2025年10月現在、ギガ上海工場から輸出されるモデル3のラインナップがアップデートされ、航続距離の大幅延長、パフォーマンスの強化、そしてデザイン面での微調整が施されています。特に、LGエナジーソリューションの最新5Mバッテリーパックを搭載したことで、欧州の厳しい環境基準をクリアしつつ、ドライバーにさらなる魅力を提供。WLTP基準で最大750kmの航続距離を実現したこの更新は、テスラのグローバル戦略の象徴です。
LGの新5Mバッテリーによる航続距離の大幅向上
テスラのモデル3更新の目玉といえば、何と言ってもバッテリーの進化です。今回アップデートされたモデル3には、LGエナジーソリューションの最新82kWh容量の5Mバッテリーパックが標準搭載されました。このセルは、最近中国市場で初披露されたもので、エネルギー密度の向上と効率化により、従来モデルを上回る性能を発揮します。ギガ上海工場で生産されたこれらのバッテリーは、欧州の厳格な排出ガス規制や航続距離基準をクリアし、テスラの「持続可能なモビリティ」を体現しています。
WLTP(Worldwide Harmonised Light Vehicles Test Procedure)基準による新航続距離は、以下の通りです。なお、WLTPはEPA(米国基準)より寛容で、EPA換算では15~20%程度短くなる点に注意してください。
- ロングレンジRWD(後輪駆動):750km
- ロングレンジAWD(全輪駆動):660km
- パフォーマンス:571km
これらの数字は、従来のモデル3ロングレンジRWDの約629kmから大幅に向上しており、特にRWDモデルでは120kmもの延長です。このバッテリーの強みは、セル構造の最適化と冷却システムの改善にあります。5Mパックは、従来のNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)セルを進化させたもので、耐久性が高く、低温環境での性能低下を最小限に抑えます。欧州の寒冷地ユーザーにとっては朗報で、冬場の航続距離不安を解消するでしょう。
さらに、テスラのソフトウェアアップデート(OTA: Over The Air)と連動することで、エネルギー効率がリアルタイムで最適化されます。例えば、2025年の最新アップデートでは、ヒートポンプの効率が向上し、航続距離をさらに5%伸ばす可能性があります。日本市場では、2024年末に導入されたハイランド版モデル3がベースですが、この5Mバッテリーの欧州投入は、日本版でも順次更新されているようです。補助金制度の観点からも、航続距離750km超えはEV普及の起爆剤になるはずです。テスラのバッテリー戦略は、CATLのLFP(リン酸鉄リチウム)からLGのNMCへシフトしつつあり、多様な選択肢を提供する柔軟性が魅力です。
パフォーマンスの強化とハードウェアの包括的更新
航続距離の延長だけでなく、モデル3パフォーマンスバリアントの出力強化も見逃せません。新5Mバッテリーパックの高いエネルギー密度により、パフォーマンスモデルは500馬力(前モデル比+40hp)を達成。0-100km/h加速タイムは3.3秒から3.1秒へ短縮され、スポーツカー並みの瞬発力が加わりました。このパワーアップは、バッテリーの放電効率向上によるもので、テスラのエンジニアリングの粋を集めた結果です。高速道路で、追い越し時の余裕が格段に増すでしょう。
全グレード共通のハードウェア更新も充実しています。以前のレポートで触れた通り、以下の変更が施されています:
- デザイン微調整: フロントフェンダーのエアロダイナミクス改善で、Cd値(空気抵抗係数)を0.219からさらに低減。燃費効率が向上し、航続距離に寄与。
- インテリア強化: アンビエントライトの追加と、ダブルパネルガラス採用で静粛性を高め、長距離ドライブの快適性を向上。
- サスペンションとブレーキ: パフォーマンスモデルでは、アダプティブダンパーとカーボンセラミックブレーキのオプションを拡大。ハンドリングの精度がさらに洗練。
- インフォテイメント: AMD Ryzenプロセッサの搭載で、レスポンスが高速化。FSD(Full Self-Driving)の新機能、例えば「ASS:Actually Smart Summon」がスムーズに動作。
これらの更新は、テスラの「進化する車」というコンセプトを体現。欧州市場では、2025年の厳しい安全基準(Euro NCAP 5つ星維持)に対応し、自動緊急ブレーキやレーンキープアシストの精度を向上させています。パフォーマンスの強化は、テスラが単なるEVメーカーではなく、パフォーマンスカーのリーダーであることを証明します。加速の爽快感と航続距離のバランスが、欧州の坂道や都市部で真価を発揮するはずです。
方向指示レバーの復活とユーザー中心のサービス戦略
アップデート版モデル3のもう一つのトピックは、方向指示器レバー(ターンシグナルストーク)の復活です。以前のハイランド版で削除された方向指示器レバーが、新生産車に標準復帰。さらに、テスラは既存オーナー向けにリフィットプログラムを欧州では開始しています。2023~2025年生産のストークなしモデル3に対応した左側ストークキットを、€660(約10万円)で提供します。この価格には、好みのテスラサービスセンターへの配送とインストールが含まれ、利便性を重視したサービスです。
テスラの声明によると、
「このパッケージは、2023年、2024年、2025年に生産されたターンシグナルストークなしのモデル3車両に対応。購入後、配送とインストールが含まれます。」
これは、中国市場で先行実施されたパターンと同じで、ユーザーからのフィードバックを即座に反映した好例です。ステアリングホイールのボタン操作に不満の声が多かったモデル3オーナーにとって、朗報でしょう。リフィット作業は約1時間で完了し、ダウンタイムを最小限に抑えます。
このプログラムは、テスラのユーザー中心戦略の象徴。日本市場では、ストーク削除が一部不評でしたが、今回のアップデートで再びモデル3の販売が拡大するかもしれません。テスラのサービス網拡大(2025年現在、日本国内サービスセンター10カ所超え)と連動し、オーナー満足度を高めます。全体として、この更新はモデル3を「永遠のエントリーモデル」として進化させ、競合(BMW i4やMercedes EQE)を圧倒する布石です。欧州はグローバルスタンダードの先駆けで、日本ユーザーも注目です。
テスラのモデル3更新は、バッテリー革新からユーザーサービスまで、テスラの未来像を凝縮したもの。航続距離750kmの夢と、パフォーマンスのスリル、そして柔軟なカスタムオプションが、EVの新時代を告げます。
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