テスラ車の185万台「リコール」から考えるクルマの未来

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Credit:Tesla
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一昨日、米国で185万台ものテスラ車のリコールが発表されました。一方で、この「リコール」は、いつもの通りOTA(Over The Air:無線)ソフトウェアアップデートで対応する、すなわち修理工場に持ち込むこともなく、自動で空から振ってくる対応済みの新しいソフトウェアをインストールするだけで、対応完了となる類のものです。

リコールの詳細

今回のリコールでは、ボンネットがロックされていない場合、風によりボンネットが完全に開いてしまい、ドライバーの視界を妨げる可能性があるということです。これにより、衝突やその他の事故のリスクが高まる可能性があるというものです。リコールの対象となるのは、マグナ・クロージャーズ社が中国で製造したフードラッチを搭載した車両で、概ね最近の全車種といえる以下のモデルが対象となり、その総数は185万台とされています。

  • モデル3(2021年~2024年)
  • モデルS(2021年~2024年)
  • モデルX(2020年~2024年)
  • モデルY(2020年~2024年)

この問題は中国で最初に発見され、ラッチハードウェアの回収と車両の検査が開始されました。エンジニアリング調査の後、テスラは自主リコールを行うことを決定し、北米と欧州では、ボンネットセンサーがボンネットが閉まっていることを検知しないという数件の事故が報告されましたが、これまでに事故は発生していないようです。

OTAアップデート

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この185万台もの「リコール」の情報により、7/31のテスラ株は約5%下落しました。一方で、実はこの問題は、対象となるテスラ車では概ねすでに修正済みで、6月のソフトウェアアップデートバージョン2024.20.3でOTAソフトウェアアップデートにより対応されています。

つまり「リコール」の発表とその対策の順番が逆転して、リコール発表時点では既に対策済みという状況なのです。

これと同じような現象は以前にもありました。その時の問題は、バックカメラの画像が表示されないことがあるバグとして特定され、ドライバーの後方視界が低下する可能性があり、テスラは2023年12月26日に初めてこの問題を認識し、直ちに調査を開始、問題の特定からわずか2日で修正プログラムを開発しました。この修正プログラムアップデートは、2024年1月3日にすべての対象車両に展開されたのです。一方で米国運輸保安庁からのこのリコール通知がテスラに届いたのは2024年1月23日で、すでに問題が解決されてから実に20日後のことでした。

「リコール」という用語

テスラは事故や火災、そして今回のような「リコール」といったトラブルが大きなニュースとして取り上げられる傾向があります。「テスラ、米で185万台リコール 開くボンネット検知せず」といったセンセーショナルなヘッドラインのニュースとして取り上げられると、何事かということになるでしょう。

しかしながら実際には、既にソフトウェアアップデートで対応済みの不具合なのです。かつて、この状況に苛立ったイーロン・マスクCEOが単純なソフトウェアアップデートで対応できる不具合を「リコール」と呼ばないように米国運輸省にクレームを入れていましたが、その気持ちも分からないでもないです。

また、少し前の情報ですが、テスラの「リコール」のうち99%はOTAソフトウェアアップデートで対応しているという調査結果もあります。その後これまでの「リコール」対応を考えると、現時点で統計をとっても同じような状況になっていると思われます。

恐らく、こうした状況は既存大手自動車メーカー、および規制当局はこれまで想定していなかったでしょう。一方で、テスラをはじめ電気自動車のトレンドは、物理的なものをソフトウェアに置き換える準備を着々と進めています。直近の例で言うと、テスラはハンドルについていた方向指示器とシフトレバーを撤去して、方向指示器はハンドルの静電タッチボタン、シフトレバーはセンタースクリーンに機能を担わせて廃止しました。

最終的な到着点はハンドルもアクセルもブレーキもないロボタクシーに向かってどんどん進んでいくのだと思うのですが、その際のカギになるのはソフトウェアで制御できるか、つまりSDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェアで定義されたクルマ)化の程度になるのだと思います。そして、世界一その技術と取り組みが進んでいるのがテスラ車なのです。

今回のようなOTAアップデートでリコールに対応したという事例が日本の自動車メーカーにあるのかどうか不明ですが、少なくともクルマの未来がこの方向に進んでいくことは間違いなさそうです。そして、ソフトウェアで競争力のある自動車メーカーがこれからは生き残っていくのだと思わずにはいられません。

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