運輸業界のゲームチャンジャー、テスラセミについてこれまでに判明している事まとめ

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テスラは2017年12月14日、世界に向けて電気トラック「セミ」を披露しました。まもなく、この技術的な傑作が世界中の高速道路で見られるようになると考えられます。

納車は12月1日に開始され、テスラの最初の顧客はペプシコです。

しかし、すでにセミの目撃情報はこれまでに何件も出ています。テスラのウェブサイトでは、これらの車両を「ビースト」と呼んでおり、納車されるまですべてがわかるわけではありませんが、これまで断片的にでも明らかになった情報はたくさんあります。現在わかっているところでは、このテスラセミが世界の運輸業界を揺るがすイノベーションになり、輸送業界のゲームチェンジャーになると考えられています。

テスラセミの幕開け

テスラのCEOイーロン・マスク氏がテスラセミについて初めて言及したのは、2016年7月20日に同社ウェブサイトに掲載された「マスタープラン パート2」の中でのことです。

ヘッダーの下に「地球上の主要な輸送形態をカバーするために拡張する」という見出しで、CEOはセダンやSUVに追加してさらに踏み込んで以下のように述べています。

「大型トラックと高旅客密度の都市交通という、他に必要とされる電気自動車のタイプがあります。どちらもテスラでは開発の初期段階にあり、来年(2017年)にはお披露目できるはずです。テスラセミは、安全性を高め、操作するのが本当に楽しくなる一方で、貨物輸送のコストの大幅な削減を実現すると考えています。」

性能について

2017年にテスラセミを発表したとき、マスク氏は現在走っているセミトラックと、200万ドルのスーパーカー、ブガッティ・シロンとを比較しました。CEOが最初に語った特徴はその性能でしたが、単なる性能ではありません。

テスラはこの性能を「BAMFパフォーマンス」と名付けました。外観だけでもセミはトラックストップで目立つ存在になりますが、トラック運送業界を変えるのはその性能です。

テスラセミ発表会

テスラセミは当初、独立したモーターを4つ搭載する予定でしたが、現在は3つになっています。それでも、車両のスピードが落ちることはないようです。テスラセミが無積載の状態で約5秒で時速60マイル(約時速100km)に到達する映像を見せながら、マスク氏は「信じられないような感覚、他にはない加速をする車両を望んでいました。」と語っています。また、最大車両総重量80,000ポンド(約36トン)を積載しても、20秒で時速60マイルに到達します。

坂道では、現在のディーゼルトラックは5%の勾配という条件では時速45マイルしかでませんが、テスラセミは同条件で時速65マイルになるということです。

テスラセミの航続距離

スピードと加速は間違いなく印象的で、現在走っているディーゼルトラックよりもかなり性能が改善されていますが、航続距離は輸送業界で最も重要なファクターとなっています。テスラは、同社のセミの航続距離は、最大車両総重量と高速道路での速度で500マイル(約800km)であると述べています。トラック輸送のルートの80%は250マイル(約400km)以下であるため、この航続距離は非常に重要なのです。マスク氏は以下のように語っています。

「人里離れた場所まで荷物を運んで帰ってくることができるのです。通常のディーゼルトラックが納屋の壁のようなデザインであるのに対し、テスラのセミトラックは弾丸のようなデザインです。セミは、その車体設計により、加速性能と航続距離を生み出すことができます。通常のディーゼルトラックの空気抵抗係数は0.65〜0.70ですが、テスラセミは0.36で、通常のディーゼルトラックの負荷を半分に減らし、ブガッティシロンの0.38にも勝る空気抵抗の性能を持つのです。」

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なめらかなノーズとフラットなボトムには、トレーラーに合わせて調整するサイドフラップが付属しています。これらの機能は、空気抵抗をカットし、航続距離を伸ばすのに役立ちます。

テスラセミの充電

テスラが太陽光発電を併設した大型充電設備「メガチャージャー」を展開し、低廉な電気料金を保証しているため、セミは太陽光発電の電力で走ることができます。メガチャージャーは、空のセミを30分で70%まで充電することができます。ほとんどの地域で、ドライバーは6時間ごとに30分の休憩を取らなければならないので、この充電時間の短さは非常に重要なファクターとなるのです。同社によると、セミは30分で400マイル(約640km)の航続距離を追加し、さらに6時間持続させることができるのです。さらに、これらの充電器は、運転手がセミの荷物を積み下ろししている間に充電できるような目的地に設置される予定とされています。

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テスラメガチャージャー

ディスプレイとソフトウェア

セミのインテリアは、モデル3およびモデルYに最も似ています。セミにはインストルメントクラスターはありませんが、ドライバーの左右に横長のディスプレイが2つあるのが特徴となっています。

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右側のディスプレイには、音楽、電話、車内温度などにアクセスでき、現在のテスラにある伝統的なランチャーが入っているようで、左側のディスプレイには、タイヤの空気圧、トレーラーの空気供給、駐車ブレーキ機能など、トラック特有の機能が下部に表示されています。

ソフトウェアはいつでも変更可能ですが、現在の車両のソフトウェアを説明するには、モデル3およびモデルYと比較するのが最も適しています。

セミは基本的にモデル3およびモデルYのディスプレイを、真ん中で分割しています。スピードメーター、シフト、バッテリーのインジケーターがあるディスプレイの左側部分と、車両のビジュアライゼーションはセミの左側ディスプレイに表示されます。

モデル3では、地図やアプリなどの情報が表示されるディスプレイの右側部分が、セミの右側ディスプレイに表示されます。

しかし、テスラはこれらの機能でディスプレイ全体を占めているわけではありません。それぞれのディスプレイの約3分の1は、常時点灯するブラインドスポットカメラモニターのために確保されているようです。

バッテリー

テスラはセミに搭載されるバッテリーの正確な容量を公表していませんが、その大きさを正確に評価するのに十分な情報を公開しています。

テスラは、セミが1マイルあたり2kWh(1kmあたり1.24kWh)以下の効率を達成するとしています。また、テスラはセミの航続距離を約300マイルまたは500マイルにすると言っています。

これら2つの情報から、セミは2つのバージョンで提供されると推測できます。約1,000kWh、つまり1MWhのバッテリーを搭載する「ロングレンジ」バージョンと、約600kWhのバッテリーを搭載する「スタンダード」バージョンです。

ちなみに2022年モデルのSは100kWhのバッテリーを搭載しているので、テスラセミはこのモデルSと比較して6倍から10倍とかなり大きなバッテリーを搭載することになります。

大きなバッテリーを搭載することで、より多くのバッテリーに電流を流すことができるため、テスラの現行モデルよりも速くセミを充電することが可能になります。

安全性

セミには、テスラの既存車種と同じ安全機能が搭載されており、テスラが数え切れないほどの称賛を得ている基準と同じものです。セミには、強化型オートパイロット、自動緊急ブレーキ、自動車線維持、前方衝突警告が搭載されています。

また、運転席を車体中央部に配置することで、万が一の衝突時の安全性を高めているとのことです。バッテリーパックを車体下部と中央部に配置することで、低重心化を実現しました。これは現在のテスラと同じで、車両が横転する可能性を低くしています。

ジャックナイフは不可能」(ジャックナイフ:トレーラーが急ブレーキをかけた際に、トレーラーがトラクターに対し折れ曲がる現象)とマスク氏は宣言しました。モーターが独立しているため、セミはジャックナイフの状況を検知し、車が横滑りしないように必要な車輪へのトルクを調整するのだということです。

「あなたの最悪の悪夢は、このトラックで消え去りました。もうない。心配する必要はありません。」

運転体験

テスラセミの運転体験について、マスク氏は「モデルSやX、3を運転しているようなものだ」といってます。

「ただ大きいだけです。 今日、道路を走る大型トラックは、10~18段のギアを搭載しています 。これは、大変な数のシフトチェンジです。テスラセミの運転手は、ドライブにシフトするだけでいいのです。」

運転席は、広々としたコックピットの中央にあり、人が立てるほどの高さがあります。ビデオや写真では、スリーパーキャブの部分をお見せすることができませんが、しかし、コックピットの奥には寝床を確保するためのスペースがかなりあります。

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信頼性

マスク氏は発表会で衝撃的な約束をしました。セミは100万マイル(160万km)は故障しないと保証したのです。この数字に自信があるのは、独立したドライブトレインを搭載しているからだそうです。1つのモーターが止まっても、他のモーターがその故障による障害をカバーすることができるのです。マスク氏は、モーターが2つしか作動しなかったとしても、セミはディーゼルトラックに性能で勝てるだろう、と語っています。

トラックは重量物を運搬するため、ブレーキ性能が試されます。しかし、これも他のテスラと同様、ブレーキは発電機として使われ、エネルギーをバッテリーに戻す回生ブレーキとして機能します。

「ブレーキパッドは文字通り永久に使えるのです。内燃機関を取り外すということは、メンテナンスのためのトランスミッション、排出ガススクラバー、ディファレンシャルがないということでもあるのです。」

セミは「耐熱核爆発ガラス」を搭載しています。マスク氏は、「核爆発に耐えられるか、全額返金されるかだ」と言い切りました。彼は、従来のセミトラックのフロントガラスは平均して少なくとも年に1回は割れていると指摘しました。世界のいくつかの地域では、フロントガラスにヒビが入った状態での走行は法律で禁止されています。つまり、たった1つのヒビが原因で、トラック運転手は修理待ちのために仕事ができなくなるのです。テスラの装甲ガラスは、そのリスクを取り除いてくれるのです。

他のテスラと同様、テスラアプリはテスラセミにも搭載されます。その機能には、遠隔診断、予知保全、位置追跡、テスラモバイルサービスへの接続が含まれます。

所有コスト

トラック輸送は特殊なビジネスです。主にディーゼル燃料やメンテナンスのコストが変動するため、コストの予測が難しいのです。セミが発表された2017年当時、1ガロンあたりのディーゼル燃料価格は2.50ドルでしたが、5年後には2倍以上になっています。

テスラは、電気はディーゼル燃料に比べて1マイルあたり2.5倍安いので、運転手は3年間で約20万ドルの節約になると試算しています。また、定期メンテナンスのためにトラックを店に置いておく必要もなく、フロントガラスにヒビが入ったために道路を離れる時間も減るため、かなりの節約になるのです。

セミの空力特性は、車列を組んで走行する場合、さらに大きなコスト削減効果を発揮するようです。3台のトラックが平均時速60マイルで走行する場合、1マイルあたりのコストは0.85ドルになると試算されています。この価格は、ディーゼルトラックだけでなく、電車にも勝っている水準なのです。

購入企業

これまでこのテスラセミの手付金を支払ったのは、大手企業ばかりです。ウォルマートは130台、UPSは125台、ペプシは100台、アンハイザー・ブッシュは40台、フェデックスは20台のセミを予約しています。

セミを購入したとされるのは、他にシスコ、DHL、ライダー、ロブローズなどです。また、複数の独立系トラック運転手がセミを確保したとみられています。運輸業界におけるこの注目の技術的ブレークスルーであるテスラセミは、かつてカリフォルニアのディーラーに配送されている姿も目撃されています。

また、カリフォルニアのペプシの施設にもメガチャージャーが設置されています。恐らく世界中の高速道路でこの印象的なテスラセミが目撃され始めると、より多くの企業がこの輸送業界のゲームチェンジャーに乗り変えていくことになるのでしょう。

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